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2016年度LS種目別日本一決定戦!
第29回全日本ライフセービング種目別選手権大会・Vol.2
2016/06/23

The 29th Japan National Lifesaving Individual Championships Vol.2 2016.6.11〜12

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連覇あり、新生チャンピオン誕生ありの大会


福井県若狭和田海岸で行われた第29回種目別選手権。

綺麗できめ細かい砂浜、透明度の高い海と最高のフィールドで開催された今大会。

しかし、そんな風光明媚な雰囲気とはうらはらに、波穏やかでフラットな状況下でのオーシャン競技、高温多湿なコンディション下で行われたビーチ競技ともに、選手にとってはなかなかハードな戦いとなった。



文・写真=LSweb編集室




男子ボードレースに新星現る!

LSweb 大会2日目後半戦ともなると、どの種目も決勝の1レースを残すのみとなるので進行が早い。ビーチスプリントに続いて、オーシャンエリアではクラフト競技のボードレースが行われた。

 まずは女子のボードレースから。

 昨年、一昨年とこの種目2連覇中なのは西浜SLSCの伊藤真央(旧姓・上村)。危なげなく決勝へ駒を進め狙うは3連覇だ。

 ライバルは、勝浦LSCの我妻菜登、茅ヶ崎SLSCの名須川紗綾、柏崎LSC高橋志穂といった日本代表クラスの実力者が揃っており、激しい戦いとなりそうだ。

 スタート序盤の好位置争いで前に付けたのはやはり、伊藤、我妻、名須川、高橋の面々。その中に青学大LSCの白鳥紗貴の姿も見える。

 沖のブイを回る中盤には、少し縦長の展開へ。

 我妻が集団から少し離れたポジションを取り先頭を伺う。その我妻をしっかりマークしつつ伊藤と白鳥が徐々にピッチを上げると後続との差も少しづつ広がり始めた。
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 終盤は地力に勝る我妻と伊藤が一騎打ちの争いへ。波打ち際、ボードを先に降りたのは伊藤、ゴールまで一気に駆け抜けてみごと優勝を果たした。2位に我妻、3位には白鳥が粘りきりゴールした。

 2年前の27回大会で優勝し頭角を現した伊藤。涙なみだの勝利インタビューだったのを思い出すが、今では日本トップクラスの選手となり、みごと3連覇を達成した。
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LSweb 続いて男子。

 ボードレースはエントリー数も多く、予選を勝ち抜くのもひと苦労だ。さらに決勝に進むとこれまたベテラン勢を中心とした実力者たちのぶ厚い壁が存在する。

 その筆頭が、西浜SLSCの長竹康介であり、他にも荒井洋祐であり、東京消防庁LSCの落合慶二、勝浦LSCの篠田智哉といった強者が待っている。

 みごと予選を勝ち抜いてきた東海大クレストの石塚康敬、寒河江健太、国士舘大LSCの塚本佳樹といった学生組がベテランの強固な壁に跳ね返されるのか、はたまた風穴をあけるのか。

 ボードの着水音と派手な水しぶきとともにほぼ横一線のスタートを切った男子。
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 沖のブイ回りではまだ6〜7人がトップ集団を形成している。

 第三ブイを回ったところで、大外の石塚が少し前に出たか? 続いて西浜の荒井と長竹がピタリとマークして後を追う。落合、塚本あたりもその後ろに懸命に食らいつく展開。

 先頭争いは終盤までもつれ込むも、しっかりと最後まで粘りきり1番にゴールへと駆け上がったのは石塚。みごとベテラン勢の壁を粉砕しボードレースの頂点に立つと、ゴール直後には歓喜のガッツポーズで喜びを爆発させていた。
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 続く2位争いは西浜の荒井と長竹というベテラン勢がゴール間際まで接戦を繰り広げ、最後のランで一歩先んじた荒井が2位、長竹が3位という結果に終わった。

 中学で陸上、高校で競泳をやっていて、ライフセービングは大学に入ってから始めたという石塚。

LSweb 「自分はライフセービングを始めてまだ3年ですし、スポーツ歴が濃いわけでもないので調整の仕方とか正直あまり分かってないです。とにかく一回一回の練習を大事にしていて、一本一本の練習を全力で頑張るっていうのをモットーにしています。
 
 自分は集団になってウネリの中で漕ぐのが苦手なのですが、神奈川オープンで勝ったことによって一次予選でもちょっとマークされているような感じがして漕ぎにくかったんです。でも予選レースの動画をみてウネリや集団の対応の仕方を考えて今日のレースに臨みました。

 そのお陰で、最後の決勝レースは本当に上手くハマったと思います。
 インではうまく抜くことができなかったんですが、それでも苦手だった集団の中でウネリをうまくつかませて貰って、第2ブイあたりから自分の持ち味である〝こぎ続けるパドル〟を実践してレースすることができました」

 落ち着いた口調でしっかりと決勝レースを振り返ってくれた石塚は最後に、
 「この結果に傲ることなくしっかりやって、この夏に向けて頑張っていきたいと思います」と抱負を語ってくれた。

まだまだベテラン健在のビーフラ

LSweb 2日目の午後一番に行われたのはビーチフラッグス男女の決勝レース。

 大勢の観客が注目するなか、若狭和田の美しく細かい砂の上で決勝に残った男女8人によるサバイバルレースが始まった。

 女子は昨年優勝の川崎汐美がいないなか、昨年準優勝の勝浦LSC但野安菜、昨年の全日本を制したベテラン館山SLSCの藤原梢らが安定した力をみせてレース前半の主導権を握る展開となった。

 表彰台確定となるベストスリーを決める決勝5レース目に残ったのは、藤原、但野の他に大体大LSCの諸麦美咲と柴田夏希の4人。

LSweb 藤原と但野は危なげなくフラッグをキープ、残る一本をチームメイトで争う形となったが、スタートで勝った柴田が取り、諸麦が惜しくも4位となった。

 続く6レースも藤原、但野がきっちりと決め、優勝争いはこの2人に絞られた。

 最終レース、スタートの合図と共にほぼ同時に起き上がった2人。

 中盤でほんの一歩前に出た藤原がうまく体を寄せつつ優位なコース取り行い、先にフラッグへ飛び込む。舞い散る砂煙のなか立ち上がった藤原の手にはしっかりとフラッグが握りしめられていた。

LSweb 昨年秋に行われた全日本に続き、種目別も制した藤原。

 「ここまで長距離を運転してきてしまったので、老体にはやや厳しいコンディションとなりましたね(笑)。
 でも着いてみたら素敵な海だったのでテンションも上がっていい感じで試合に臨めました。

 調整は、ここでピークっていう所にはそれなりに合わせていけている気はします。
 予選からやや疲れはあったものの〝これはマズイな〟という大きな不安要素はなかったので、結果に繋がりました」と、試合後にレースを振り返りながら語ってくれた。

 男子はここ数年、西浜SLSC対式根島LSCが表彰台の順位を巡って激しい火花を散らす戦いとなっていた。LSwebしかし、今年は式根島の野口勝成、和田賢一が決勝序盤でダウンするという展開でレースは進んだ。

 第5レースが終了し、表彰台を確定させたのは、西浜SLSCの植木将人、勝浦LSCの堀江星冴、そして成城学園LSC高梨友美生の3人。残すはメダルの色を決める2レースのみ。

 次レースでダウンとなり銅メダルが確定したのは、高梨。ここでは経験の差が出たといったところだろうか。まだまだ若いので練習を積んで精進していってほしい。

 いよいよビーチフラッグスのキングを決める最終レース。

LSweb 静寂の中、スタートの合図とともに跳ね上がる二人の身体。起き上がりながら反転しての最初の一歩は僅かに植木のほうが早かった。

 その先、堀江に身体を寄せて外へ押し出すようなコース取りを仕掛けながら前に出た植木は、そのまま一直線にフラッグへと突っ込み、確実にフラッグを掴み取った。

 初動における僅かの差が、中盤では大きなアドバンテージとなり、植木がレースを優位にコントロールできた、まさにお手本のような1本となった。

 「全豪の後、正直いうと身体の調子が今ひとつで、ここまで思い通りの調整ができてなくて、スプリントでもレース毎に好不調の波がでてしまいました。

 だから、ビーフラの決勝レースでもどの程度身体が動くのか、始まるまですごく気になっていました。でも、ひとレース走ったら案外調子よくいけたので、最後まで気持ちよく走ることができてホッとしています」と、植木。

IMG_0125 昨年に続いて大会2連覇を達成した植木だが、なんとこの種目別では10年連続で表彰台に上っているという思い入れのある競技会でもある。

 ちなみに、今年の種目別は、9月に行われるレスキュー世界大会の代表選考レースも兼ねている。

 植木にとっては、2年前に代表を逃した種目別でのリベンジレースという位置づけで臨んだ今大会でみごと最高の結果を出してみせた。

 今大会のビーチフラッグス男女でそれぞれ優勝した藤原と植木は、世界に名だたる日本のお家芸としてこの種目を長らく牽引してきたベテランであるのは誰もが認めるところ。

 そんな二人は大会前に何度か一緒に練習したそうで、藤原は、
 「植木さんとは〝お互いに頑張ろう〟と激励し合っていたので、なんというか(この大会にかける)思いも強くて、なんとかしてやろうという秘めた思いは二人ともかなりあったと思います。それが勝因のひとつかもしれませんね」と振り返って教えてくれた。

今年のライフセーバーKING&QUEENは!?

 ビーチフラッグスの熱気が冷めやらぬうち、海の方ではオーシャン種目最後の競技となるオーシャンマンとオーシャンウーマンがいよいよ始まる。今大会は、ボード、スキー、スイムという競技順が採用された。

 オーシャンウーマンといえば、九十九里LSCの三井結里花が他の追随を許さず女王の座をキープし続けている。その最有力候補である三井が今大会は不参加。その分、選手の力は拮抗しており、これまでにない接戦が予想された。
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 スタート1周目のボードでトップ争いを演じたのは、茅ヶ崎SLSCの名須川紗綾と西浜SLSC伊藤真央、上野真凜、柏崎LSC高橋志穂、地元、若狭和田LSC山本裕紀子。

 接戦を制して2周目のスキーへトップで入っていったのは、名須川、続いて伊藤、高橋、山本らが次々と漕ぎ出していく。
 第三ブイを回ったところで、トップは依然、名須川、2位には山本と高橋が接戦で続き、このままの順位でラストのスイムへ。
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 ここで泳ぎに自信を持つ山本がスパート。

 第一ブイ手前で先頭を行く名須川を捉え、トップへ躍り出ると、気合いの入った泳ぎでその差を徐々に広げ、そのままゴール。サーフスキーに続き、今大会2種目めのトップフィニッシュを飾り、地元開催に花を添えた。

LSweb 続いてオーシャンマン。

 スタートのボードは、昨年の種目別と全日本を制している湯河原LSCの西山 俊を先頭に、西浜SLSCの上野 凌、長竹康介、園田俊、柏崎LSCの片山雄紀、加藤豪、法政大SLSCの渡邉孝之、小松海登らが集団を形成。

 集団はそのままトランジットエリアへなだれ込み、2周目となるスキーへ最初にたどり着いたのは渡邉。その後も間髪入れずに片山、西山、長竹らがスキーを漕ぎ出してゆく。
 ここまで先頭集団は熾烈な争いが続いており、勝負の行方はまだまだ分からない。

 第三ブイを回って先頭に付けた園田の操るスキーが徐々にスパートをかける。それにピッタリと付けたのが西山だ。
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 この2人と後続の差が徐々に広がり、この時点でのトップ争いは2人に絞られた。先にスキーを降りてトランジットエリアを走り抜けたのは園田。それに西山が続く。

 最後はスイム勝負。

 身体2つ3つ分ほど前を行く園田を西山がドルフィンスルーで追う。スイムコースの連ブイを回ってトップに立ったのは西山。

 若狭和田のビーチは遠浅なのでかなり沖でも足が着く。立ち上がってコースの位置を確認しつつ幾度となくドルフィンスルーを繰り返しゴールを目指す。
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 この時点で2番手の園田との差はかなり開き、最後は余裕のゴール。昨年に続き、キング・オブ・ライフセーバーの称号を手にした。

タフなビーチランを制したのは誰だ

LSweb いよいよ大会も最後の種目、2kmビーチランを残すのみとなった。

 ビーチランの場合、浜の広さや潮の満ち引き、天候などによって、砂地のコンディションが変わってくる。例えば、雨が降ったり、波打ち際を通るコースの場合は、砂が水を吸ってある程度引き締まっているので走りやすくなる。

 今年の若狭和田のコースは、終始乾いたソフトな砂地を走らなければならず、加えて高温多湿の気象条件が重なり選手にはタフなコンディションとなった。

 昨年の女子は、日女体大LSCがみごとワン、ツー、スリーフィニッシュを決めて表彰台を独占した。
昨年優勝の小林果蓮、3位の金子真優らもしっかりと決勝に名を連ねている。
LSweb またしても日女体大旋風が吹くのか、それとも他クラブの選手が割って入るのか。ひとつ見どころである。

 スタートから先頭集団を形成したのは、西浜SLSCの片平悠理亜メリッサ、日女体大LSC金子、小林、成城学園LSC北川恵、国士舘LSC小宅芹菜、流経大LSC大内みのりといったメンバー。

 厳しさを増す後半も先頭集団の顔ぶれはほぼ変わらず、勝負は最終500mへ。

 最後は小林が粘り勝ちトップでゴール。みごと大会2連覇を飾った。2位には西浜の片平が入り、日女体大のワンツーを阻止、3位には金子が、それぞれ僅かの差でゴールした。
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 高校時代は駅伝をやっていたという小林。

 「去年の種目別で勝ったのですが、全日本では同じクラブの大井先輩に残念ながら負けてしまいました。この種目別では連覇もかかっていたので、しっかりと結果を残したいと思って臨みました。

 終盤で競るのは苦手なので、駅伝の経験を生かして序盤500メートルあたりからピッチを上げていこうという作戦でいきました。
 かなり粘られましたが、終盤でしっかり走りきれて結果を出せたのでよかったです」と、まだ息が上がるなか、一生懸命レースを振り返ってくれた。

 大トリは男子の2キロ。
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 スタート直後、飛び出したのは国士舘大LSCの渡辺優斗。昨年の優勝した須藤 凪も国士舘大LSC所属ということで、この種目には定評のあるクラブのひとつだ。

 それを追うように西浜SLSCの中川慎太郎、東海大クレスト石塚康敬、下田SLC久 源太、大体大LSC大西飛翔、式根島LSC笹田直太ら10人ほどがトップ集団を形成。

 中盤からは、中川、笹田、大西が先頭を引っ張りながらトップ争いをするも、終盤にスパートをかけた中川に後続は着いてこられず余裕のトップフィニッシュ。
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 気温も高く蒸し暑いハードなコンディションの中、終始表情を変えることなく淡々とトップを走り続けた中川。
 細身の身体だが、脅威のスタミナを誇り他の選手を圧倒した、みごとな走りっぷりだった。2位には笹田、3位には流経大LSCの宗方恭太郎が追い上げを見せ、みごと銅メダルをたぐり寄せた。


 福井県若狭和田で初開催された種目別選手権もこれにて全種目が無事終了した。

 種目別の終わりと共に、夏のパトロールシーズンがもうすぐ始まる。来たるべき監視活動に向けて努力を続ける全てのライフセーバーの皆さん、水辺の事故〝0〟へ向けて、今年もよろしくお願いします!(敬称略)
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【第29回全日本ライフセービング種目別選手権大会 成績表】




☆★☆ 「第29回全日本ライフセービング種目別選手権大会」 表彰台2 ☆★☆

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