Competitions

LSweb
今年も開催!〜BOSO CUP〜
第13回千葉県ライフセービング競技会 レポートVol.1
2015/10/27

千葉県銚子市・銚子マリーナ海水浴場 2015.10.17-18

LSweb

全日本の後に開催されるオーシャン競技会として年々盛り上がりを見せているのが、千葉県内のライフセーバーが参加する「BOSO CUP」だ。

さて、今年の大会やいかに?

ホストクラブである、銚子ライフセービングクラブの浅見雄一郎さんにレポートしていただいた。(LSweb編集室)



文=浅見雄一郎(銚子LC)
写真提供=BosoCup





総勢400人超が参加

 10月17〜18日に千葉県銚子市にある、銚子マリーナ海水浴場にて第13回千葉県ライフセービング競技会が開催された。この大会はBOSO CUP(房総カップ? 暴走カップ?)という愛称で千葉県内のライフセーバーに親しまれている。

 今大会には県内27クラブ、350人の選手、オフィシャルやトレーナーチーム等のスタッフを含めると400人を超える規模となり、全日本の各地方予選に匹敵するほどの大会へと成長した。また、この大会は他の大会にはない、アットホームな雰囲気が漂っているせいか、オフィシャルにも大変人気のある大会でもある。

大会初日〜予選から白熱の戦い〜

 大会初日の朝は生憎の雨と冷たい北風が吹く天候となった。そんな中、各種目の予選が始まる。

 今大会は、個人種目として、ボードレース、サーフスキーレース、フレッシュマンボードレース、ビーチフラッグス、ランスイムラン、オーシャンマン・オーシャンウーマンの6種目。
 団体種目として、ビーチリレー、本来4人のオーシャンマンリレーを、5人で行うタップリン5の2種目。合計8種目で総合優勝を争う形となった。

 アットホームな大会とはいえ勝負は真剣そのもの。次ラウンドに進出し歓喜するものもいれば、敗退し涙をのむ選手もいる。そこは全日本選手権や全日本学生選手権と大きな違いはない。

LSweb 今大会の目玉種目はフレッシュマンボードレース。

 このレースの参加資格は今年からライフセービングを始めたライフセービング歴1年未満の選手に限るものであり、必然的に大学1年生が多く参加するレースとなる。筆者の目には、ラインナップする選手の姿は先輩たちとは違い、どこか自信がなく、緊張感を隠しきれていないように映った。

 スタートのホーンが鳴り、海に向かいダッシュする選手たち。

 フレッシュマンということもあり、マリブボードの扱いに慣れていないせいか、インや勝負所で沈をしたり、最後の波打ち際の処理にもたついて、惜しくも次ラウンドに進出できないなど、通常のボードレースにはないドラマがフレッシュマンレースにはある。

 浜辺で後輩のレースを観戦しているチームの先輩の中には「何でそこで沈するんだぁ~~~」と頭を抱えるも人もおり、予想のつかないレース展開には最後まで目を離すことができなかった。

LSweb またベテランライフセーバーにとっては、競技会のスイム種目としてお馴染のランスイムランが今大会で復活。

 調べてみると、全日本選手権でランスイムランが行われたのは2005年が最後。神奈川県の大会で一時期復活したものの、現在のスイム種目の主流はサーフレースとなっており、競技会でランスイムランが行われるのは非常に貴重な機会となった。

 サーフレースとは違い、ランスイムランは読んで字の如く、走って泳いで走る。スタートしてから走る距離が長く、泳ぎ終わり浜に上がってからも、更に走らなくてはいけないため、泳力がある選手が優位にレースを展開できるわけではないのがランスイムランの特徴である。

 1位で海から上がってきたのに、ゴール手前で抜かれたり、決勝進出ラインの選手たちの最後の激しいランの攻防が非常にエキサイティングであった。サーフレースとは違い、選手が見えている時間が長いから、観戦がしやすいとの声もあり、来年以降も本大会ではランスイムランが採用されることを期待したい。

 選手たちの熱気が天に伝わったのか、大会が進むに連れて天候が回復し、天候も大会の盛り上がりに花を添える形となった。大会初日に各種目の予選が終了し、ボードレースを残し、決勝進出者が出揃った。さて決勝の熱戦は……レポートVol.2「大会最終日」に続く!


BOSO CUP番外編


その1 仮装オフィシャル

 今大会はハロウィーンが近いこともあり、最後のタップリン5の折り返し旗がカボチャに変身! オフィシャルからも「優しく回って下さーい」とアナウンスがあった(笑)。

その2 充実の出店で縁日気分!?

 大会会場の銚子マリーナには数多くの出店が並んだ! 銚子名物の「ぬれ煎餅」や「いわし団子汁」、「フランクフルト」や「混ぜご飯」、「おでん」などが出店されていた。

 中でも人気だったのが、「スモークターキー」と「ベーコン串揚げ」と「ピザ」。若い選手が多いせいかカロリー高めの商品が人気であった。
LSweb

カボチャの折返し旗

出店の様子

出店の様子

その3 オーストラリアに追いつけ! IRBレース

 オーストラリアで行われている、IRBを使ったレースも行われた。彼らは普段の大会で安全課として選手の安全を守ってくれる。いわばライフセーバーのライフセーバーだ(IRBとはInflatable Rescue Boatの略称である)。

 彼らのテクニックは以下のURLから動画で見てもらいたい。説明するよりも百聞は一見に如かず!






LSweb
第41回全日本ライフセービング選手権大会レポート・Vol.2
卓越のサーフ競技編
2015/10/17

The 41st Japan National Lifesaving Championships 2015.10.10-11 神奈川県藤沢市・片瀬西浜海岸

LSweb個人種目・チーム種目合わせて7種目が予定されていたサーフ競技。

しかし、強風の影響により、オーシャンマン/オーシャンウーマンリレーが中止となった。

各チームが気合いを入れる最終種目だけに、中止の決定が発表されると落胆の声が聞こえたが、自然相手の競技にはこうしたリスクはつきものだ。

さて、そんな自然を味方につけたのは誰か? 卓越したサーフ種目を見ていこう。

文・写真=LSweb編集室





サーフスキーはベテラン勢強し

LSweb 正確なデータは取っていないが、全日本の実施競技の中で、参加選手の平均年齢が最も高いと思われるのが男女のサーフスキーレースだろう。

 女子決勝には、今大会参加者の女子最年長、篠田敦子(館山SLSC)と同年代の尾田依津子(神戸LSC)が、男子決勝には45歳の大西 明(逗子SLSC)がスタートラインに並んだ。

 女子は、ラインアップ直前まで笑顔で会話をするなど、決勝とは思えない和やかな雰囲気。だが、スタートのフォグフォンが鳴ると一転、力強いパドルさばきで水しぶきが上がった。

 スタートで飛び出したのは、河崎尚子(銚子LC)だ。フランスのエマニュエル・ベシャロンも先頭集団で第1ブイへと向かった。
LSwebLSweb
 時折うねりの入るコンディションの中、先頭で第3ブイを回航したのは山本裕紀子(若狭和田LSC)だった。その後は後続との差をジリジリと広げ、笑顔で余裕のフィニッシュ。初めての全日本タイトルを手にした。
LSweb
 「ついに獲りました! 全日本のタイトルを」と、喜びを爆発させた山本。

 「若狭和田は、ほんまに海がきれいなところなんです。地元では、その海で町おこしをしようとしており、それならば“日本一の海に日本一のライフセーバーがいる”ビーチにしたいと、私が勝手に町を背負って全日本に挑みました。
 ただ、思ったより風とカレントが強く、改善中のスタートがうまく決まらず、インでは8番ぐらい。焦りましたが、パドル力で挽回することができました」とレースを振り返った後、ラグビー日本代表の五郎丸選手の真似をして、後続選手を笑わせた山本だった。

 2位は河崎尚子(銚子LC)、3位は久保美沙代(和田浦LSC)。IMG_6898-2

 表彰台常連の2人だが、「次こそは…と思っていると、いつも誰かがヒョイッと上にいっちゃうんですよ、もう」と言いながら、それでも楽しそうに顔を見合わせた。

 尾田はシード権獲得の7位。篠田は12位でシード権は逃したものの、「一緒に練習してくれる仲間がいるので」と、静かに来年への闘志を蓄えていた。

 女子とは対象的に、ラインナップ前からピリピリした雰囲気が漂っていたのが男子だ。

 スタートと同時に激しいパドル合戦が繰り広げられたが、その中からスッと抜け出たのが出木谷啓太(九十九里LSC)だった。そのままパドルの手を緩めることなく先頭で第1ブイを回ると、混戦の後続を引きはなしフィニッシュを決めてガッツポーズ。
LSwebLSweb
 種目別に続き優勝を手にした出木谷は、「勝因はインでうまく出られたこと。好調の秘訣は、高いレベルの人たちと一緒に、楽しく練習できていることですね。周りに感謝です」と破顔した。

 2位の西山 俊(湯河原LSC)は「混戦になる前に第1ブイを回った出木谷さんが上手かったです」と、また3位の松沢 斉(下田LSC)も「スタートがすべてでしたね」と出木谷を祝福した。
LSwebLSweb
 大西は8位入賞。「いやぁ、これ(入賞)本当に嬉しいよ」と話す大西のその横で、学生で唯一決勝に残った牛越 智(波崎SLSC)が、「これまでとは別の世界を見ることができました。あれだけ離されると、逆に清々しいです」と決意を新たにしていた。

三井、西山ら日本代表が実力示す

 女子のサーフレースとオーシャンウーマンレースで実力を見せつけたのが、社会人2年目の三井結里花(九十九里LSC)。
LSwebLSweb
 サーフレースでは学生チャンピオンの高柴瑠衣(鹿島LGT)を寄せ付けず、またオーシャンウーマンでは最初のスイムからリードを奪い、ボードとスキーで独走態勢を固めてのフィニッシュとなった。

 「オーシャンウーマンは得意なスイムスタートだったので、最初から飛ばしていきました。私はいつも後先考えずに最初からかっ飛ばしていくタイプなので(笑)。ボードとスキーは後ろの気配がなかったので、落ち着いてできましたね。
 勤務先では月〜土曜日まで毎日、担当する授業があるので、学生時代に比べて練習時間を確保するのが難しくなりました。その分、いかに質の高いトレーニングができるか工夫し、最近はウエイトトレーイングも取り入れています」と話す三井だった。

 男子のサーフレースは、大島圭介(湯河原LSC)が逆転で優勝を手にした。

 レース終盤まで先頭を泳いでいたのは、トリコロールカラーの波崎SLSC軍団。榊原 司、松林俊樹、小松海登の3人が表彰台を独占するかに見えたその時、内側から一足早く走り出したのが大島だった。
LSwebLSweb
  「第1ブイは2位で、調子がいいなと思いましたが、こういうコンディションでは最後まで気が抜けないので、落ち着くように心がけました。アウトで前に波崎の帽子が3つ見えて、これはやばいと。最後のインカレで活躍できなかったのが、逆にバネになったかもしれませんね」と大島。

 一方、波崎SLSCの3人は、「(大島)圭介にやられました。全然見えませんでした」と2位の榊原が言えば、「周りに波崎の帽子しか見えなくて、これはとワンツースリーかと興奮しながら泳いでいたのですが……」と5位の小松。3位の松林も、ウンウンと頷くしかない状態だった。

LSweb オーシャンマンレースは、西山 俊(湯河原LSC)が貫禄の勝利。

 レース直後のコメントでは、「スイムでリードできれば、こういう(ジャンクな)コンディションなら勝てると思っていました。
 ただ、ボードのアウトで何度も沈をしてしまい、軽くパニックになりかけちゃって。でもスキーに自信があったので、気持ちを落ち着かせることに集中しました」と、4年ぶりのタイトルに満足げな笑顔を見せた。

 2位は園田 俊(新島LSC)。3位にはベテランの長竹康介(西浜SLSC)が入った。

LSwebLSweb
 今年から消防の現場ではなく、事務方に異動したという長竹は、「今までのように、職務の一環としてトレーニングを積むことがなきなくなり、フラストレーションも溜まりました。でも、そういう環境が普通でがんばっている人はたくさんいるので、自分もやれるだけはやってみようと。
 もし今回成績が悪かったら、やっぱり自分には無理なんだと言い訳して、競技をやめていたかもしれないです。でも、表彰台に上ることができました。ある意味、やめられなくなりましたね」と笑った。
 その笑顔は、余裕すら感じさせる穏やかなものだった。

地元西浜、ボードで魅せた実力

 ボードレースで強さを発揮したのが、地元の西浜SLSCだ。
LSwebLSweb
 女子は、上村真央が波をつかんでトップフィニッシュ。市川恵理(館山SLSC)、原田 香菜(下田LSC)がそれに続いた。

 「落ち着いて波を見ることができたのが勝因です。インでちょっと出遅れましたが、慌てると自分の漕ぎができなくなるので、慌てず、楽しもうと。それに待っている仲間がいるので、早く帰ってこようと思いました」と上村。

 2位の市川は、「慕っていた先輩が出産のため現場からしばらく離れることになり、目標としていたものがなくなって宙ぶらりんの状態でした。そんな私を見守ってくれた先輩たち、声をかけてくれた仲間、そして一緒に練習してくれたマーボーさん(湯河原LSCの青木将展)に感謝です」と大粒の涙をこぼした。
LSwebLSweb
 最後まで上村とトップ争いをしていた水間菜登(勝浦LSC)は、「波に乗り損なった時に、私の悪い癖が出ちゃいました。焦って漕ぎ続けるのではなく、一呼吸置いて次の波を待てばよかったのですが……」と、痛恨の沈で6位と表彰台を逃した。

LSweb 優勝した上村は、「私や菜登だけじゃなく、今の大学生だって卒業しても続けていけば、このくらいのレベルにはなると思います」と言う。そうなれば、さらに見応えのあるレースが展開されるようになるのだろう。

 男子は西浜SLSCの荒井洋佑、長竹康介、上野 凌という地元勢が、表彰台を独占した。

 1位の荒井は、「こういうコンディションではよく練習していたので、落ち着いてやれば大丈夫だと自分自身に言い聞かせていました。今年はチームの四連覇がかかっていたので、西浜ワンツースリー最高です!」と満面の笑みを見せた。
LSwebLSweb

西浜4連覇、波崎が初の表彰台

LSweb 初日に行われたチーム種目のレスキューチューブレスキューでは、波崎SLSCが女子、男子は西浜SLSCが制した。

 溺者役・大山玲奈、救助者・田中 舞の小柄なペアを、大井麻生と丸山みどりの長身2人が力強くドラッグした波崎SLSC。

 「周りと競っていたので、ここは身長が高い私たちの利点を活かして、なるべく沖でピックアップしようと思いました」と言う大井の作戦が大当たりした。

 西浜SLSCは廣田 諒が溺者役、上野 凌が救助者。
 トップで浜まで戻ってくると、石川修平と伊藤光宏が廣田の手首を握り、猛然とフィニッシュラインへダッシュした。その後を、日本体育大学LSCが追う。

LSweb フィニッシュライン間際で、西浜SLSCのドラッガー一人が砂に足を取られ転倒。その間に日体大LSCもラインを切る。両チーム、非常にきわどい争いとなった。

 『ライフセービング競技規則2014年版』によれば、レスキューチューブレスキューの着順は、「フィニッシュラインを越える溺者役に接している最初の競技者の胸の位置で判定される。(後略)」となっている。

 判定確認のため順位の発表が翌日に持ち越されたこの種目だったが、正式な順位はドラッガー一人が先にラインを越えた西浜SLSC、続いて日体大LSCとなった。

 「規則をしっかり頭に入れていなかった自分がいけないのですが、もし自分の転倒で1位を逃すようなことがあったらと考えると、夜も眠れませんでした」と、口にしたのは石川。

 「いやぁ、若手二人のがんばりに応えることができてホッとしました」と、伊藤も笑顔を見せた。

LSweb サーフ競技最後の種目となったのが、ボードレスキューだ。

 女子は「ランが得意なので、インで上手く抜けられました」と言う丹羽久美と、「スイムが3番以内ならいけると落ち着いてレースをすることができました」と言う水間菜登の勝浦LSCが優勝した。

 サーフ種目だけでなく、ビーチ種目でも活躍する2人。

 「ランもスイムもクラフトも、オールマイティーにならないと世界で通用しないので」と話す先輩、水間の言葉をしっかりと受け止めている丹羽だった。

 上野真凛・上村真央の西浜SLSCは、惜しくも2位。

 「最後、波に乗れませんでしたね」と肩を落とす上野に、「でも楽しかったね」と声をかけた上村。その言葉で上野も笑顔を取り戻した。

LSweb デッドヒートの男子は、榊原 司・牛越 智の波崎SLSCが鮮やかな勝利を決めた。

 「もう、最高!」と抱き合った2人。
 「波崎のメンバーの皆で江ノ島周辺に引っ越してきて、チームで練習する環境を整えての勝利です」と声を弾ませた。メンバーはレース前日には鍋で決起集会もやったそうだ。

 総合成績は、そんな波崎SLSCが過去最高の3位で初めて表彰台に立った。

 「今年は表彰台を狙える実力でしたが、まさか本当に表彰台に上ることができるとは」と涙を見せたのは、波崎SLSCの学生代表を務めた大山玲奈だ。

 チームメイトに胴上げされ宙を舞う大山の姿を見ながら、「今年は玲奈さんが学生代表で、女性の代表は初めてではないですけど、でもやっぱり珍しいし、これまで以上に明るい環境になって、とても良い雰囲気で練習することができたんです。ここまでメンバーががんばってこられたのは、玲奈さんの影響が大きくて……」と、レスキューチューブレスキューが終わった後、こっそり話してくれた大井の言葉が思い出された。
LSwebLSweb
 総合2位は学生パワーでベテラン勢に立ち向かった日本体育大学LSC。江ノ島をバックに「日体大、最高だー!」と雄叫びを上げた。

LSweb そして見事、総合優勝四連覇を成し遂げたのが西浜SLSCだ。

 競技委員長の小田切伸矢は、「ボードレースで西浜勢3人がトップで上がってきた時には、鳥肌がたちました。プレッシャーのかかる中で、戦ってくれたチームメイトたちは本当にすごい。ただただ、皆に感謝です。ありがとうございました」と頭を下げた。

 それぞれの思いを胸に挑んだ第41回全日本選手権大会。

 夕暮れ時のビーチエリアでは、多くの選手や仲間たちが輪を作り、過ぎゆく大会の余韻に浸っていた……。(文中敬称略)
LSweb


【第41回全日本ライフセービング選手権大会 成績表】



LSwebLSweb
LSwebLSweb
LSweb
LSwebLSweb
LSwebLSweb



LSweb
第41回全日本ライフセービング選手権大会レポート・Vol.1
白熱のビーチ競技編
2015/10/14

The 41st Japan National Lifesaving Championships 2015.10.10-11 神奈川県藤沢市・片瀬西浜海岸

LSweb
10月10〜11日の2日間、レスキューアスリートの頂点を決める「第41回全日本ライフセービング選手権大会」が、神奈川県藤沢市の片瀬西浜海岸で開催された。

大会初日は曇りで海はフラットだったが、2日目は南西の風が徐々に強くなり、午後には風速10m/sオーバーに。

沖には白波が立ち、波打ち際はジャンク、そしてビーチでは砂が猛烈に舞うコンディションとなった。

文・写真=LSweb編集室





海外から9選手がエントリー

LSweb 今年の全日本は、西・中・東日本の予選会から数えると、59クラブ、1285人が参加する過去最大規模の大会となった。

 その中には、常連のモーガン・フォスター(ニュージーランド)を筆頭に、オーストラリアから2人、そしてフランスから6人のオープン参加選手たちも含まれている。

 1990年代から全日本に出場しているフォスターは、日本式のビーチフラッグススタート(通称“サムライスタート”と呼ばれる体を軸足に引きつけて素早く回転するスタート)を習得するため、日本で修行をしたという経歴の持ち主だ。

 1995年に18歳でビーチフラッグスNZタイトルを初制覇して以来、NZタイトル10回、世界大会3連覇、2001年には全豪も制している大ベテラン。LSwebちなみに。全日本でも7回優勝しており、日本のベテランビーチフラッガーたちとは旧知の仲だ。

 オーストラリアから参加したのは、ゴールドコースト市でライフガードとして勤務する、オースティン・マットとチェイリィ・スティーブの2人のプロフェッショナル。

 2000年から行われている神奈川県ライフセービング連盟との交流プログラムのため来日中で、サーフスキーレースとサーフレースにエントリーした。
 
 競技結果は「予選敗退だったよ」と苦笑していたが、BLSアセスメント会場で見せてくれたデモンストレーションは、さすが本場プロの技だった。

LSweb 2012年と2014年の世界選手権総合3位、強豪のフランスからは代表クラスの選手が男女各3人ずつ参加した。
 3週間前に全仏大会が終わったばかり。メンバーの中にはエマニュエル・ベシュロン(オーシャンウーマン)、クリマン・ロングフォス(男子ビーチスプリント)、バチスト・ソション(男子ビーチフラッグス)という3人の現役チャンピオンも顔を揃えた。

 今回の遠征の目的を聞くと、「日本はオーシャン競技で手強い相手だったので、機会があれば全日本に参加したいと考えていました。やっとタイミング合い、参加することができたので、選りすぐりのメンバーで来ましたよ。特にビーチフラッグスは層が非常に厚いと聞いているので、楽しみですね」という答えだった。
LSwebLSweb
 41回の歴史を積み重ねてきた全日本だが、過去、これほど多くの外国人選手がエントリーしたことはなかった。全豪レベルにはまだほど遠いが、これも日本の競技レベルが上がっていること、そしてライフセーバーたちの交流が広がっていることの一つの証だと思う。

雨ニモ負ケズ、2kmビーチラン

LSweb フランスチームが特に楽しみにしている、というビーチ種目は2日目に決勝が集中した。

 まず、朝一番に行われたのが2kmビーチランだ。前夜からの雨が上がらない、ウェットなコンディションでのレースを制したのは、女子が大井麻生(波崎SLSC)、男子が須藤 凪(下田LSC)という大学生ライフセーバー。

 2人とも先月行われたインカレで1km×3ビーチリレーに出場し、見事に優勝したメンバーだった。

 全日本二連覇を達成した大井は、「ハッキリ言って、昨年の方が調子良かったし、インカレからの気持ちの切り替えもしなければいけなくて。
 でも、今年はチームが総合優勝を狙える実力なので、この波崎の渦巻きのキャップでなんとしても貢献したいと思い夢中で走りました。体力的なことも考え、もう少し後でスパートするつもりだったのに、気が焦って予定より早く飛び出してしまいました。トップでゴールできて良かったです」と、喜びをあらわにした。
LSwebLSweb
 2位の小林果蓮(下田LSC)は、インカレを一緒に戦ったチームメイトでもある。

 「(大井)麻生さんはラストスパートが速いので、その前に離しておかなければいけなかったのですが……。追いつけませんでした」と、顔をしかめた。太ももにテーピングをしていた小林。実は疲労骨折していたのだとか。ゆっくり静養し、しっかり直して来年に備えてほしい。

LSweb 須藤も体調は万全ではなかった。

 「インカレの後に胃腸炎になってしまい、1週間まるまる練習できませんでした。だいぶ良くなったのですが、実は昨日のボードレース予選でやらかしてしまい準決勝に進めませんでした。それもあって、この種目はなんとしても勝ちたいと思っていたんです」と、ほっとした笑顔を見せた。

 2位には、「2013年以来の表彰台です。その時は高校生に負けてけっこうショックだったんですよ。社会人でも勝てるところを見せたいので、またがんばってトレーニングしてきます」と話す、浅見泰希(東京消防庁LSC)が入った。

学生強し、ビーチスプリント

LSweb 女子のビーチスプリントは、長野文音(日本体育大学LSC)が他の追従を許さない安定した走りで二連覇を達成した。2位は4度目の膝の手術から復帰した藤原 梢(館山SLSC)、3位には川崎汐美(新島LSC)が入った。

LSweb 3位の川崎は、「スタートは悪くなかったと思います。ただ(長野)文音が後半に強いのは分かっていたので、前半でどれだけ離せるかが勝負だと思いました。
 彼女が視界に入ってきたのは、たぶん60mぐらいのところです。来た! と思ったらサーッと行かれちゃいました。(藤原)梢さんが見えたのはその後で、最後にかわされてしました」と、くやしそうに話した。LSweb

 4位は高校1年生の田中 綾(昭和第一学園LSC)。中学までサッカーをやっていたという田中に、決勝に進んだ感想を聞くと、はにかんだ笑顔とともに「うれしいです」と一言。華奢な高校生の今後の成長が楽しみだ。

 男子は森 新太郎(銚子LC)が、全仏チャンピオンのクリマン・ロングフォスをゴール間際でかろうじて振り切り、昨年に続き優勝した。

 後半に加速する森だが、ロングフォスも後半に伸びるタイプ。日本では敵なしの感がある森には、非常に良い経験になったはずだ。

LSwebLSweb
 「僕も決して悪い状態ではなかったけれど、でも、彼は速かった。次に対戦したらどうかって? そうだな、彼のほうが若いからトレーニング次第でもっと伸びると思うな」と言うロングフォスは、森と握手をしながら「トレーニング! トレーニング! トレーニング!」と声を掛けていた。

LSweb 日本体育大学LSCがアベック優勝したのがビーチリレーだ。

 インカレもアベック優勝した同校だが、決勝のメンバーはそれぞれ1人ずつ入れ替わっていた。

 予選と決勝でメンバーを入れ替えた女子は、「5人で勝ち取った勝利です」と声を揃え、肩を抱き合った。

 男子は入れ替わった西山晃祐が、「プレッシャーはありましたけれど、セレクションで選ばれたのだからと、自信を持って走りました」と、力強くコメント。誰が選ばれても勝てる、層の厚さを見せつけた。
LSwebLSweb

4秒の攻防、ビーチフラッグスにかける思い

LSweb 全仏5連覇中のバチスト・ソションも出場したビーチフラッグスは、予想どおり予選から激戦が繰り広げられた。

 北海道から参加した長内瑠輝(小樽LSC)は、今夏、地元の小樽ドリームビーチに海水浴場が開設されなかったため、新潟県の海水浴場でガードを行い、柏崎LSCと一緒にトレーニングを積んだ。その成果は切れの良いスタートに現れ、準決勝まで勝ち上がった。

 ソションも全仏チャンピオンの実力を発揮し、順当に勝ち上がったのだが、決勝進出まであと1本というところ、惜しくも敗退した。

 ビーチフラッグス男子決勝の顔ぶれは、ディフェンディングチャンピンの和田賢一(式根島LSC)、モーガン・フォスター、植木将人(西浜SLSC)、小田切伸矢(西浜SLSC)、堀江星冴(勝浦LSC)、上原修太(白浜LSC)、西山晃祐(日本体育大学LSC)、安達和也(新島LSC)の9人。

LSweb 安達、小田切がダウンしての3回戦、予選から抜群の走力を活かして縦横無尽に走り回っていた和田が、学生チャンピオンの堀江を撃破。続く4回戦は植木に狙いを定め、こちらも見事にダウンさせた。

 日本一を決める戦いは、和田とフォスターの一騎打ち。ここで勝負に出たのがフォスターだ。

 スタート直後の走り出しで和田の前に出ようと右肩を入れた時、2人の体が激しく接触した。そのままよろめくこともなく、フラッグに向かって一直線にダッシュを続ける2人。だが、リードしていたのは和田だった。

LSweb 昨年、ウサイン・ボルトが所属するジャマイカのチームでトレーニングを積んだ和田は、これまでとは一段ギアをアップした走りで、最後のフラッグを手中に収めた。

 今年の冬は、スペイン・カタルーニャ州の州立トレーニングセンターでトレーニングすることが決まっているという和田。「来年の全豪、圧倒的な差をつけて優勝します」と、力強く宣言した。

 「スタートからの5mで彼の前に出られなければ、負けると分かっていた。彼の方が明らかに、今の僕より走力があるからね。でも、ケンほうが速かったね」と言うと、フォスターは駆け寄る愛娘を抱き上げた。

 「う〜ん、実力ではもう勝てないのかな……」と口を開いたのは、表彰台で歓喜するチームメイトの様子を、少し離れたところから見つめていた植木だ。

 植木らと共に一時代を築いた本多辰也(東京消防庁LSC)は、大会終了後こんなことを言っていた。
LSweb
 「昔は(北谷)宗志や植木とガチガチやって、口も聞かない時代がありましたよ。でも、今は植木が決勝でがんばっている、宗志がケガから復帰した、何より同い年のモーガンが優勝争いしている、そういう姿を目にすると、よし自分もまたがんばろうと思います。
 それと同時に、慕ってくれる後輩のことも考えますね。具体的に指導するのではなくても、一緒にトレーニングしながら、何かを伝えていくことはできるのかなと。もちろん、僕は自分がやりたいから続けているんですよ。でも、続けているからこそ、いろいろな思いが湧き出てくるんです。来年は正真正銘の40歳。いろいろな思いを消化しながら、またこの場に戻ってきたいと思います」

 ビーチフラッグス女子を制したのは、元世界チャンピオンの藤原 梢(館山SLSC)。
LSwebLSweb
 「四度目の膝の手術をした後は、さすがにモチベーションが上がらず、続けることが苦痛でたまりませんでした。でも不思議なもので、会社でいやなことがあってもクラブに顔を出して仲間に会うと気分が晴れるし、ケガで代表を辞退した後も、ずっと連絡してくれる代表仲間もいるんです。
 そういう一つ、一つが心の支えになっているのかな。だんだん、皆の気持ちに応えたいと思うようになれたんです」と、藤原。

 それからはお台場で一人、朝4時から黙々と練習を続けてきたのだそうだ。「植木さんにも声をかけてもらい、何回か一緒に練習もしましたよ」と、藤原は付け加えた。

 誰かのために……というライフセービン活動は、巡り巡って自分のエネルギーになっているのだと、うっすらピンク色に染まった西の空を見ながらふと思った。

 後編に続く……。(文中敬称略)

LSwebLSweb
LSwebLSweb
LSwebLSweb
LSwebLSweb



LSweb
第30回全日本学生ライフセービング選手権大会
“繋”〜30回目のその先へ〜 優勝者・コメント集
2015/10/07

The 30th Intercollege Lifesaving Championships
Champions Comments

LSweb9月26〜27日にかけて、千葉県の御宿海岸で開催された「第30回全日本学生ライフセービング選手権大会」。

学生ライフセーバーたちがインカレにかける思いは特別なものだ。それは、学生時代しか出場することのできない特別な大会だから。

ハードなコンディションの中で開催された30回目の記念大会。大舞台で悔しい思いをした選手もいたはずだが、それも含め、きっと一生忘れない大会となったに違いない。

優勝したライフセーバーたち、Congratulations!! 競技直後のうれし涙と笑顔のコメント集をお届けしよう。

多少聞き取りづらい部分や、見にくい画像もありますが、全力で挑み結果を出した選手たちの生の声と喜びの表情ををぜひご覧下さい。全競技、あります!

LSwebLSweb

★☆★ 第30回インカレ優勝者・コメント動画 ★☆★





LSwebLSweb
LSwebLSweb



LSweb
目指せ、 大学日本一!
42校が激突!! 第30回全日本インカレ選手権
2015/10/02

第30回全日本学生ライフセービング選手権大会
The 30th Inter College Lifesaving Championships

2015.9.26-27 千葉県・御宿海岸

LSweb
大学生ライフセーバーが一堂に会する全日本インカレ選手権。今年は1986年の第1回大会から数えて、30回目の節目の大会を迎えた。

大会会場の千葉県御宿海岸に集結したのは、九州から関東までの大学42校。一向に止まない雨の中、大学日本一の座をかけて熱い戦いが繰り広げられた。



文・写真=LSweb編集室




サーフ競技は長距離決戦

LSweb 御宿の海は今年も手強かった。

 オーバーヘッド、時にはダブルサイズの波がコンスタントに打ち寄せ、強い潮流が東から西へと流れるコンディション。極めつけは、ショアブレイクでの強烈なダンパーだ。

 そんな状況を目にして、荒天のためサーフ競技の大半が実施できず、総合成績がつかなかった、昨年の大会が頭をよぎった関係者もいたのではないだろうか。

 だが、今年はなんとしても総合成績を出してあげたい、という大会スタッフの尽力もあり、ハードコンディションながらも無事、大会が成立した。

 ただし、ブレイクポイントの沖側にブイを設置したため、スイムブイ(連ブイ)までの距離が通常の倍以上になるロングコースに。選手たちにとっては、波だけでなく距離も克服しなければならない、タフなレース展開となった。

 最初の決勝種目は男女のサーフレース。

 女子は泳力に定評のある早稲田大学の高柴瑠衣が鮮やかにボディーサーフィンを決め、まずは一種目目の優勝を手にした。2位は大学1年生ながら最後まで高柴に食らいついた、日本大学の成澤侑花。

 タフなコンディションで無我夢中とおもいきや、「沖から来た波に高柴さんがスーっと乗っていくのが見えた時、さすが日本代表だなぁ、上手いなぁと思いました」と、客観的にレースを振り返る落ち着きぶり。今後の活躍も期待できそうだ。
LSwebLSweb

 男子は法政大学の松林俊樹、小松海登がワンツーフィニッシュを決めた。

 「昨年2位で悔しい思いをしたので、今年は絶対に勝ちたかったんです。1年に速い後輩がいましたが、先輩の意地がありますから」と松林。

 1年の速い後輩、小松は「インのブレイクでがんばったら、アウトはバテバテで、自分の順位は全然わかりませんでした。でも上がってきたら先輩たちが歓声を上げてくれたので、慌てて走りました」と言った後、「初めてのインカレで表彰台に立てちゃいました!」と満面の笑顔を見せた。
LSwebLSweb
 2人はともに波崎SLSCに所属する仲間でもある。IMG_5559

 「夏のガードは皆で寝泊まりして、なんか家族になったみたいで楽しかったです」と天真爛漫なコメントを聞かせてくれた小林。ライフセービングが楽しくてしょうがない、そんな新人ライフセーバーの活躍に、先輩や応援に駆けつけたOBOGたちも大いに盛りあがっていた。

 スキー→ボード→スイム→ランと繋いだ、オーシャンマン/オーシャンウーマンリレー。女子はスキーで抜けだした早大が独走態勢で優勝。男子は大阪体育大学と早大が抜きつ、抜かれつの大接戦を演じた。

LSweb 大体大は小林 海がスキーで飛び出し、僅差のリードを保ったまま最後のスイムへ。

 しかし、最後の最後で早大の江藤亜門が波に乗り大体大をかわすと、ランの小澤俊仁がトップでフィニッシュラインを駆け抜け、男女アベック優勝を飾った。

 「タッチの5秒前までは勝てる! と思っていたのですが……。僕が振り向いた時には、早大がもう走り出していました」と悔しそうに唇を噛んだのは、大体大のアンカー、関路哲史だ。

 だが、サーフのリレー種目で同大学が表彰台に上るのは初めてのこと。確実にレベルアップしている大体大が、総合成績でも表彰台に立つ日はそう遠くないかもしれない。

ビーチ競技は混戦模様

LSweb 初日、二日目と予想外に雨が長引いた今回のインカレ。ビーチの砂は重く湿り、足にまとわりつくようなコンディションとなった。

 予選、二次予選、準決勝と長丁場の戦いを勝ち上がり、ビーチフラッグスの決勝に勝ち上がったのは、男女各8人。

 いずれも強者たちだが、日本女子体育大学の川崎汐美と、国際武道大学の堀江星冴は、頭一つ抜けた存在だった。

 2人は8月末にオーストラリアで開催された国際大会にも出場。大柄な外国人選手相手に互角の戦いをしただけあり、落ち着いたレースさばきで優勝を手にした。
LSwebLSweb

 ビーチスプリントはゴールラインを切るまで、誰が勝ったか分からない僅差の勝負となった。女子は日本体育大学の長野文音が連覇、男子は成城大学の荒井滉太郞が、同大学にインカレ初の金メダルをもたらした。

 「昨年は自分のレースのことだけを考えていれば良かったのですが、今年は学生委員としての仕事や、リレー種目への出場もあり、アップの時間もなかなか取れませんでした。でも、そういう状況で勝てたので自信がつきました」と長野。
LSwebLSweb

 荒井は、「昨年は2位。その悔しさを忘れずにレースにのぞみました。応援の後押しもあり、念願のタイトルを手にすることができすごく嬉しいです」と頰を緩めた。

 瞬きする余裕すらなかったのが、接戦となったビーチリレー。LSweb

 この種目の勝敗を左右するのが、対面式でのバトンタッチだ。ランナー一人、一人の走力はもちろんだが、いかにスムースに、スピードに乗ってバトンの受け渡しができるかで、順位が大きく入れ替わる。そして途中でバトンを落としたら、挽回するのはかなり厳しい。

 だからこそ、スタートの直前までバトンの受け渡しを入念に確認しているチームの姿も見られた。だが、しっかり練習したつもりでも、思わぬミスが出るのが本番だ。シーンと静まりかえった会場に、スタートガンが鳴る。

 今大会、1走からアンカーまでしっかりとバトンを繋ぎ、ゴールラインを横切ったのは、女子が日体大、日女体、大体大という順番。
 男子は日体大、国士舘大学、東海大学湘南校舎だった。審判から順位札を渡された瞬間、優勝チームは拳を掲げ、喜びを爆発させた。

 チームメイトの声援を受けながら砂浜を走り、駅伝形式で行われるのがインカレ独自の種目1km×3ビーチリレーだ。この種目、ここ数年は日体大のアベック優勝が続いていたが、今年は日女体大、国士大が優勝を手にした。

 「私たち勝てると思っていたので、最初からとにかく飛ばしていきました」と声を弾ませたのは、昨年2位の雪辱を晴らした、日女体大アンカーの大井麻生。直前に出場したサーフ種目の疲れも見せず、ライバルの日体大を振り切った。
LSwebLSweb

 「2年続けて2位だったので、今年は絶対に勝ちたかったんです」とチームメイトを信じて襷を繋いだのは、国士大4年で2走の鈴木 秀。アンカーの須藤 凪はゴール直前で逆転し、その思いに応えた。襷は来年、後輩たちに引き継がれる。
LSwebLSweb

総合優勝の行方は……

LSweb サーフ競技は、時間を追うごとにタフさが増した。2日目の午前中に行われたサーフスキーレース決勝。女子は早大の大山玲奈、高柴瑠衣がワンツーフィニッシュ。3位には日女体大の大井麻生が入った。

 「瑠衣と一緒に表彰台に上れたらいいね、とは話していましたが、まさか優勝するなんて!」と自分で驚いた大山。予想では、優勝は新潟産業大学の高橋志穂だと思っていたのだとか。

 その高橋は4位で、「4連覇の夢が途切れちゃいました」とポツリ。

 一方、3位の大井は「インで出られないと勝てないと分かっていました。LSweb(大山)玲奈さんが目の前でブレイクを抜けたので、この人について行こうと。
 アウトはもう腕がパンパンでしたけど、でも波に乗らないと勝てないから死ぬ気でパドルを入れました。尊敬する2人と一緒に表彰台に立てて嬉しいです」と満面の笑み。

 大山、高柴、大井の3人は、社会人が多く集まる藤沢市・境川での自主練にも顔を出し、トレーニングをしてきたのだそうだ。

 男子は大体大の小林 海が3連覇を達成。アウトで離された東海大クレストの渡辺駿典は「来年は僕が勝ちます」と宣言した。
LSwebLSweb

 オーシャンウーマンでは再び、大山玲奈、高柴瑠衣の早大コンビがワンツーフィニッシュを決めた。LSweb

 「ラストがスイムで、(スイムの得意な)瑠衣が追ってくるのが分かっていたのでドキドキしましたが、諦めずにがんばっていれば波も味方してくれると思っていました」と大山。4年間の努力の成果が、学生最後のインカレで実を結んだ。

 オーシャンマンも早大が2人を表彰台に送り込んだ。優勝は早大の榊原 司。2位に慶応義塾大学の上野 凌、早大の江藤亜門は3位に入った。

 「オーシャンマンはずっと目標にしていたタイトルです。同期の(大山)玲奈と、いつか取りたいねと話していたことが実現して、すっごく嬉しいです」と榊原。チームメイトの大活躍に早大が沸いたのはいうまでもない。
LSwebLSweb

 男女のレスキューチューブレスキューと、男子のボードレスキューで優勝し、レスキュー種目で強さを発揮したのが日体大だ。LSweb

 「レスキュー種目には特別な思いがあるので、ここだけは落としたくなかったんです」と口にしたのは、主将、副将ペアでボードレスキューを制した山口祐太と坂本 陸。

 女子ボードレスキューは、高柴、大山の早大ペアがまたまた優勝。

 2位は鈴木悠花と藤沢真帆の国士大、3位は成澤侑花と栗原夏希の日大が入った。
LSwebLSweb
 女子のレスキューチューブレスキューは、全員3年生の日体大の4人が、絶好調の早大を抑えて優勝。

 男子も強豪の神奈川大学、国際武道大学をかわし、日体大が勝利した。LSweb

 「2人が力泳してくれたお陰で、僕ら日本一のドラッガーになることができました!」と喜びを表現したのは、小椋隆継、玉井 颯。そしてペイシェントの幡野圭祐、レスキュワーの宮腰太輔とがっちりと握手を交わした。

 サーフ種目の最終レース、ボードリレーはインのショアブレイクをどう攻略するかが勝敗の分かれ道となった。

 セットにはまり、沈を繰り返して審判から競技の中止を告げられるチームもある中、女子は再び、いや三度(四度?)、早大がトップフィニッシュを成し遂げた。

 2位は最後で離された日女体大。「う〜ん、悔しい……」と肩を落とした日女体大のその横で、歓喜の声を上げていたのが、3位の青山学院大学だ。
LSwebLSweb

 田村汐帆理、中村 優、白鳥紗貴の3人は、「今までは人数が少なかったので、リレー種目には出られなかったんです。波が高くで緊張しましたが、怖いというよりは、皆で出られて楽しい! という気持ちのほうが大きくて。表彰台に上れて、もう本当に嬉しいです」と抱き合って喜んだ。

LSweb 男子は、セットの感覚が比較的長い海面から沖に出ようと、スタートラインから大きく左に迂回するチームもあった。

 その作戦で前半、リードを奪ったのが法大と大体大だ。3人目のアンカーがスタートしたのは、法大、大体大、国士大の順番。上位2チームは左へ、国士大は正面へ。

 この時、真っ先にブレイクを抜けたのは国士大だった。6位でタッチした日大も正面突破で沖ブイを目指す。勝負はここで決まった。波に乗って最初に戻ってきたのは、国士大。続いて日大。表彰台の最後の一枠を争う法大と大体大は、逆転につぐ逆転の結果、法大が手にした。

 「ブレイクで苦戦している時に国士大が抜けるのは見えましたが、最初から左に迂回する作戦だったので」と法大アンカーの渡邉孝之。
LSwebLSweb
 「左から出るチームのことは気になっていましたが、自分たちは国士大らしくまっすぐ正面突破でいきました」と話してくれたのは、国士大アンカーの牛越 智だった。

 すべての競技が成立した、第30回全日本学生ライフセービング選手権大会。総合優勝は女子・早稲田大学、男子・日本体育大学で幕を閉じた。

 少数精鋭の早大勢が大活躍した今大会、表彰式では臙脂色のユニフォームに身を包んだメンバーが次々と表彰台に上った。

 その様子はさながら、『都の西北〜♪』で始まる同校の校歌のように、『わせだ〜、わせだっ、わせだ〜、わせだっ、わせだー、わせだー』の勢いを最後まで感じさせるものだった。(敬称略)



【第30回全日本学生ライフセービング選手権大会 成績表】



☆★☆種目別表彰台☆★☆

オーシャンマン&オーシャンウーマン

オーシャンマン&オーシャンウーマン

オーシャンマンリレー&オーシャンウーマンリレー

オーシャンマンリレー&オーシャンウーマンリレー

サーフスキーレース・男女

サーフスキーレース・男女

サーフレース・男女

サーフレース・男女

ボードレスキュー・男女

ボードレスキュー・男女

ボードリレー・男女

ボードリレー・男女

レスキューチューブレスキュー・男女

レスキューチューブレスキュー・男女

インカレグッズ・デザイン表彰

インカレグッズ・デザイン表彰

ビーチフラッグ・男女

ビーチフラッグ・男女

ビーチスプリント・男女

ビーチスプリント・男女

ビーチリレー・男女

ビーチリレー・男女

1km×3ビーチランリレー・男女

1km×3ビーチランリレー・男女








Competitions 記事タイトル一覧

年別アーカイブ