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インターナショナル サーフ レスキュー チャレンジ初日・大会結果2013/09/20

SANYO INTERNATIONAL SURF RESCUE CHALLENGE DAY 1

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日本初開催となる「インターナショナル サーフ レスキュー チャレンジ(ISRC)」が、9月21日から千葉県の御宿海岸で開催されている。

7カ国が参加する国際ライフセービング連盟(ILS)認定の国際大会。世界の強豪を迎え、日本勢はどう戦うのか? 3日間の模様をレポートする。

文・写真=LSweb編集室




初日トップはオーストラリア

 2年に一度開催されるISRCは、開催場所によって参加国の顔ぶれが少し変わる。今大会には昨年の世界大会(Rescue 2012)1位のニュージーランド(NZL)、2位のオーストラリア(AUS)をはじめ、カナダ(CAN)、アメリカ(USA)、香港(HKG)、韓国(KOR)、そして日本(JPN)の7カ国が参加。
 ニュージーランド、オーストラリア、日本、カナダ(女子選手2人のみ。総合成績はつかない)の4カ国はユースチームも送り込んでいる。
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 ISRCの特徴は、なんといっても3日間の大会期間中、まったく同じ競技種目を毎日繰り返す、短期集中のシリーズレースということだ。ただし個人成績はつかず、3日間のトータルで総合成績を争う大会だ。
 1日で個人種目・男女各6種目、団体種目・男女各3種目、リレー種目は男女混合のミックスリレーを含む4種目が実施される。チーム編成は世界大会と同じく、男女各6人。一人が何種目も出場するため、選手たちにとっては、1日たりとも力を抜くことのできない気力と体力が試されるハードな大会となる。
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 晴天に恵まれた大会初日。オープン部門でトップに立ったのは、シャノン・エクステイン、クリスタル・スミス、ナオミ・フルードなど、トップ選手をそろえたオーストラリア。17点差で追うのが、世界大会でナンバー1になったニュージーランド。続いて、地元開催で地の利のある日本チームは3位につけた。
 僅か1ポイント差で日本を追うのが、プロのライフガード集団であるアメリカ。続いてISRC2大会連続出場のカナダ、さらに近年、競技でも実力をつけてきた香港、そして初参加となる韓国という順位となった。
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 大会第1日目の成績は以下のとおり。

 なお、20日(金)はオフ日となっており、各国選手は地元、御宿町の小中学生と交流を楽しんだ。競技は21日(土)、22日(日)に行われ、最終日に総合成績が確定する。
 また、23日(月)は世界トップ選手と日本のクラブチームが競う、オープン参加の「ムーンカップ」が開催される。今週末、御宿はインターナショナルでホットな場所となる。世界レベルのパフォーマンスを間近に見て、挑戦できる絶好のチャンスだ。
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【ISRC2013 第1日目の成績】


☆オーシャンウーマン(Ocean Woman Open)
1位:Kristyl Smith/AUS
2位:Devon Halligan/NZL
3位:Natalie Peat/NZL
4位:三井結里花/JPN
7位:名須川紗綾/JPN

☆オーシャンマン(Ocean Man Open)
1位:Shannon Eckstein/AUS
2位:Max Beattie/NZL
3位:Kendrick Louis/AUS
5位:長竹康介/JPN
6位:坂本陸/JPN
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☆オーシャンウーマン ユース(Ocean Woman Youth)
1位:Emma Dick/AUS
2位:Maddy Dunn/AUS
3位:Katie Wilson/NZL
5位:高橋志穂/JPN
6位:勝又日葉/JPN

☆オーシャンマン ユース(Ocean Man Youth)
1位:Luke Cuff/AUS
2位:Ben Carberry/AUS
3位:Ben Cochrane/NZL
5位:小林海/JPN
6位:永石哲朗/JPN

☆女子サーフレース(Surf Race Female Open)
1位:Eliza Smith/AUS
2位:Mrianda Bell/AUS
3位:Natalie Peat/NZL
6位:水間菜登/JPN
12位:竹内梨夏/JPN

☆女子サーフレース ユース(Surf Race Female Youth)
1位:Carina Doyle/NZL
2位:Jessica Miller/NZL
3位:Tiarrn Raymond/AUS
5位:上野真凜/JPN
6位:勝又日葉/JPN

☆男子サーフレース(Surf Race Male Open)
1位:Dev Lahey/AUS
2位:Timothy Schofeild/AUS
3位:Tom O’neill/USA
7位:大島圭介/JPN
10位:坂本陸/JPN

☆男子サーフレース ユース(Surf Race Male Youth)
1位:Isak Costello/AUS
2位:Andrew Trembath/NZL
3位:Stefaan Demopolous/AUS
5位:永石哲朗/JPN
6位:富澤泰介/JPN

☆女子ビーチスプリント(Beach Sprint Female Open)
1位:Chanel Hickman/NZL
2位:Melissa Howard/AUS
3位:Emilly Brady/CAN
4位:但野安菜/JPN

☆男子ビーチスプリント(Beach Sprint Male Open)
1位:Jake Lynch/AUS
2位:Paul Cracoft Wilson/NZL
3位:小田切伸矢/JPN
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☆女子ビーチスプリント ユース(Beach Sprint Female Youth)
1位:Gabby Murphy/AUS
2位:Olivia Eaton/NZL
3位:中島静香

☆男子ビーチスプリント ユース(Beach Sprint Male Youth)
1位:Jackson Symmonds/AUS
2位:Jake Hurley/NZL
3位:森野友也/JPN

☆男女混合ボードリレー(Mixed Board Relay Open)
1位:NZL
2位:AUS
3位:USA
4位:JPN(落合慶二/竹内梨夏)

☆男女混合ボードリレー ユース(Mixed Board Relay Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(小林海/上野真凜)

☆男女混合サーフスキーリレー(Mixed Surf Ski Relay Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(長竹康介/名須川紗綾)

☆男女混合サーフスキーレース ユース(Mixed Surf Ski Relay Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(小林海/高橋志穂)

☆女子ビーチフラッグス(Beach Flags Female Open)
1位:Melissa Howard/AUS
2位:Chanel Hickman/NZL
3位:Emily Brady/CAN
4位:但野安菜/JPN

☆男子ビーチフラッグス(Beach Flags Male Open)
1位:Jake Lynch/AUS
2位:Brian Costello/USA
3位:Paul Cracoft Wilson/NZL
4位:竹澤康輝/JPN

☆女子ビーチフラッグス ユース(Beach Flags Female Youth)
1位:Gabby Murphy/AUS
2位:Olivia Eaton/NZL
3位:Sarah Bernier/CAN
4位:勝又日葉/JPN

☆男子ビーチフラッグス ユース(Beach Flags Male Youth)
1位:Jackson Symmonds/AUS
2位:Jake Hurley/NZL
3位:皆川貴海/JPN

☆サーフチームレース(Surf Teams Race Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:USA
4位:JPN(大島圭介/落合慶二/三井結里花/竹内梨夏)

☆サーフチームレース ユース(Surf Teams Race Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(富澤泰介/皆川貴海/坂本佳凪子/上野真凛)

☆女子サーフスキーレース(Surf Ski Race Female Open)
1位:Naomi Flood/AUS
2位:Lisa Carrington/NZL
3位:Devon Halligan/NZL
7位:名須川紗綾/JPN
9位:三井結里花/JPN

☆男子サーフスキーレース(Surf Ski Race Male Open)
1位:Lachlan Tame/AUS
2位:Shannon Eckstein/AUS
3位:Liam O’Loughlin/NZL
6位:長竹康介/JPN
10位:坂本陸/JPN

☆女子サーフスキーレース ユース(Surf Ski Race Female Youth)
1位:Tiarrn Raymond/AUS
2位:Katie Wilson/NZL
3位:Karina Radley/NZL
5位:高橋志穂/JPN
6位:中島静香/JPN

☆男子サーフスキーレース ユース(Surf Ski Race Male Youth)
1位:Bill Bain/AUS
2位:Ben Carberry/AUS
3位:Ben Cochrane/NZL
5位:小林海/JPN
6位:永石哲朗/JPN

☆女子ボードレース(Board Race Female Open)
1位:Devon Halligan/NZL
2位:Kristyl Smith/AUS
3位:Danielle McKenzie/NZL
6位:水間菜登/JPN
7位:大山玲奈/JPN

☆男子ボードレース(Board Race Male Open)
1位:Kendrick Louis/AUS
2位:Shannon Eckstein/AUS
3位:Chris Moors/NZL
5位:長竹康介/JPN
6位:落合慶二/JPN

☆女子ボードレース ユース(Board Race Female Youth)
1位:Maddy Dunn/AUS
2位:Emma Dick/AUS
3位:Katie Wilson/NZL
5位:坂本佳凪子/JPN
7位:勝又日葉/JPN

☆男子ボードレース ユース(Board Race Male Youth)
1位:Luke Cuff/AUS
2位:Stefaan Demopolous/AUS
3位:Ben Johnston/NZL
5位:小林海/JPN
6位:森野友也/JPN

☆女子レスキューチューブレスキュー(Rescue Tube Female Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:USA
4位:JPN(水間菜登/名須川紗綾/大山玲奈/竹内梨夏)

☆男子レスキューチューブレスキュー(Rescue Tube Male Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:USA
4位:JPN(坂本陸/大島圭介/落合慶二/小田切伸矢)
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☆女子レスキューチューブレスキュー ユース(Rescue Tube Female Youth)
1位:NZL
2位:AUS
3位:JPN(中島静香/坂本佳凪子/上野真凛/勝又日葉)

☆男子レスキューチューブレスキュー ユース(Rescue Tube Male Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(富澤泰介/永石哲朗/森野友也/皆川貴海)

☆女子ビーチリレー(Beach Relay Female Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(但野安菜/水間菜登/三井結里花/大山玲奈)

☆女子ビーチリレー ユース(Beach Relay Female Youth)
1位:NZL
2位:AUS
3位:JPN(中島静香/高橋志穂/上野真凛/勝又日葉)

☆男子ビーチリレー(Beach Relay Male Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(竹澤康輝/小田切伸矢/落合慶二/坂本陸)

☆男子ビーチリレー ユース(Beach Relay Male Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(小林海/富澤泰介/永石哲朗/皆川貴海)

☆女子ボードレスキュー(Board Rescue Female Open)
1位:NZL
2位:AUS
3位:USA
4位:JPN(水間菜登/大山玲奈)

☆男子ボードレスキュー(Board Rescue Male Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:USA
4位:JPN(長竹康介/坂本陸)

☆女子ボードレスキュー ユース(Board Rescue Female Youth)
1位:NZL
2位:AUS
3位:JPN(坂本佳凪子/上野真凛)

☆男子ボードレスキュー ユース(Board Rescue Male Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(永石哲朗/皆川貴海)

☆オーシャンウーマンリレー(Ocean Woman Relay Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(三井結里花/名須川紗綾/大山玲奈/但野安菜)

☆オーシャンマンリレー(Ocean Man Relay Open)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(大島圭介/長竹康介/落合慶二/竹澤康輝)

☆オーシャンウーマンリレー ユース(Ocean Woman Relay Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(坂本佳凪子/高橋志穂/上野真凛/勝又日葉)

☆オーシャンマンリレー ユース(Ocean Man Relay Youth)
1位:AUS
2位:NZL
3位:JPN(小林海/富澤泰介/永石哲朗/森野友也)

ISRC第1日目の総合成績(Day1 Total Points)
*総合成績はブロッキングシステム(各競技、各国上位1人の着順のみカウント)を採用

オープン(Open)
1位:AUS / 157points
2位:NZL / 140points
3位:JPN / 100points
4位:USA / 99points
5位:CAN / 71points
6位:HKG / 51points
7位:KOR / 12points

ユース(Youth)
1位:AUS / 65points
2位:NZL / 50points
3位:JPN / 23points
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オリンピアン源 純夏、初めて観るLS競技会「オーシャンサーフチャレンジ」レポート2013/06/21

THe 14th Ocean Surf Challenge in Shirahama2013   2013.6.16

6月16日、和歌山県白浜町の白良浜海岸で行われた「第14回オーシャンサーフチャレンジin白浜2013」の興味深いレポートが届いたので、ここにお届けしよう。
レポーターとして協力していただいたのは、徳島ライフセービングクラブ代表の源 純夏さん。LSweb

ご存じの通り、源さんは、アトランタとシドニーオリンピックに競泳の自由形選手として出場、シドニーでは400mリレーの一員として見事、銅メダルを獲得。現在は、水泳の指導などを行いながら、故郷の徳島県でライフセービングクラブを立ち上げ、精力的に活動している。

ところで、源さんはライフセービングの大会を見るのは今回が初めて。さてさて、オーシャンやビーチで行われるLS競技や大会に携わる人々にどのような印象や感想を持ったのだろうか。新鮮みあふれるレポートをどうぞ!



文=源 純夏(徳島LSC)
写真=源 純夏(徳島LSC)、東 光寿(徳島LSC)、久保亮介(用宗LSC)




何事も勉強! 安全課見習い補佐いきま〜す

LSweb 徳島からフェリーで2時間、そこから車を走らせること約1時間半でその名の通り白い砂が美しい白良浜海水浴場に到着した。ライフセーバー(実質)2年目で初めてライフセービングという競技をこの目で観るためにやってきたのだ。

 白浜町に到着し、まずはビーチへ。すでにJLAやスポンサーのサインフラッグが設置されていて明日からの大会に期待が高まるばかり。すでに夕方近かったため陸にいる大会関係者はほぼ見当たらない中、海に目を向けてみると、後に呼び方を知った「安全課」の方たちがIRBの調整を繰り返していた。

 また、そのすぐ近くでは明日出場するとおもわれる選手たちがアップをしている。
 「おー、そうか、大会に出場する前ってそんな練習するのかー」

 ここで改めて確認しておきたい。私は3年前にベーシックを取得したものの、実質の活動は昨年からで、しかもライフセービング不毛の地と言われて長い四国は徳島で細々と活動している自称・へっぽこライフセーバーである。どれほどのへっぽこぶりかと言うと、選手が当たり前に使っているマリブも私にとっては非常に珍しいのだ。

 夕方からはレスキューミーティングを経て、開会式レセプションにも出席させていただいた。前日にこうしたパーティーが行われるのがこの大会の特色らしい。来賓も地元の方が大勢お越しになっていて、地元が盛り上げようとしている姿勢がひしひしと感じられる。

 私はこれまで競泳をしていて、開会式で選手宣誓は当たり前に思っていたが、LSではオフィシャル(審判)も宣誓をするのだ・・・!
ひとつの大会を開催する側と出場する側双方で創りあげていく姿勢がまた新鮮に感じた。

 さて、パーティーの最大の盛り上がりはというと、出場チームの紹介コーナーだ。とても学校の先生とは思えない吹田氏の素晴らしいマイクパフォーマンスで各チームが壇上に上がりアピールをしていく。

 中でも群を抜いたパフォーマンスはどうやら名物(?)らしい神戸LSC。メンバーが寸分違わぬ見事な関西のズッコケを披露し、完全にその場を支配した。チームの紹介が終わり、なぜか私が壇上に呼ばれるというハプニング。どうやら、わざわざ徳島からひとりで視察にやってきているのが珍しかったらしい。幸いにも胆は座っている方なので、これ幸いにと、徳島ライフセービングクラブのアピールをしっかりとさせてもらった。

LSweb 大会当日の朝、6時過ぎにはビーチに向かう。
 さすがに選手たちはまだまだ少なく、本部も人がまばらだったが、すでに「安全課」の方々は勢ぞろいしIRBのエンジンに手を掛けているところだった。

 私も自然と大会関係者の中で最も早く1日が始まっている「安全課」のテントへ足を向け、徳島LSCにも多大なご協力を頂いている神戸LSCの古中氏や、先日受講したWSでお世話になった藤井氏といった顔見知りの方々と、「今回、私が白浜にやってきた目的はとにかく競技をこの目で観たいと思ったからだ」というようなことを話していたら、「それだったら安全課の視点から見てみるといいよ、全体がよく分かるから」ということで、私の安全課見習い補佐の1日がスタートした。

 まずはコースセッティング。浜からゴルフ用の距離を測る器具を用いて、レシーバーでIRBへ指示を飛ばす。この時のIRBの操作が凄い。レース内容にも関わる重要な作業のため慎重かつ丁寧に行われ、最終的には「5cmもずれていない(そんなワケはないのだが…)」ブイ打ちの完了。IRBの巧みな操作はもちろん、レシーバーでのやり取りひとつが私にとって勉強になる。

スイム系では、アスリート魂がうずく私

 大会の最初はビーチフラッグス(予選)。ライフセービングの中でメジャーな種目とはいえ、もちろん初観戦。まずこの競技、スターターが何を言っているのかが聞き取れない。
 笛を吹く直前の「Heads down」だけは何とか聞き取れるけど・・・、どうしても気になって質問をすると、「Competitors…Ready…」ということらしい。やたらカッコイイじゃないか。しかし、ビーチフラッグス以外の競技でのスタートは「用意…プゥフォー!(エアフォーン)」なのに、“なんでビーチフラッグスだけ?”という疑問は、お土産にしてしまった。
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 いわゆるスイムのサーフレースなら、今の私でも挑戦できる種目かなーと思いつつ、それは今回のように穏やかなコンディションであればの話で、特に午後から少しうねりがでてきた状況をみるとインアウトに関してはまだまだ経験不足だし、元々持久系にはめっぽう弱いスーパースプリンターなので「もっとトレーニングをしないとなぁ」と、いつか選手としての出場に思いを巡らせてみる。

LSweb サーフスキーレース。こうしたクラフト機材がズラリと並ぶ風景だけでも私にとっては衝撃的なのである。
 じつは一度だけ乗ったことがある。静水面でも面白いほどの沈、チン、沈。直進は何とかなっても、少し曲がろうとしただけで沈。それを自在に操るためには相当なトレーニング時間を要するのだろうなと思っていたら、やはり大きな競技会ではサーフスキーの上位はほぼ社会人だとのこと。筋力的トレーニングはもちろん、スキーを操る技術や波・潮・風を読むための経験が多く必要なのだろう。
 
 ちなみに今大会では数名がリタイアしていた。そのうちの一人の女子選手に話を聞いてみると、サーフスキーレースに出場するのは初めてだったそうだ。自らの実力不足を判断してリタイアできることもライフセーバーの能力だと改めて確認。

 ボードレース、これまたマリブ自体が珍しい私。そしてこれも一度経験がある。当然のごとくものの3秒も持たずに沈をした苦い思い出である。
 今回は本当に穏やかなコンディションで行われたレースだったが、それでも特にブイを回るときなど軽い接触が見られ、コンディションによっては相当タフなレースになるのだろうと想像する。

 しかし、この穏やかなコンディションでは逆に波を利用できないためパドルレースの様相になり、それはそれできついレースだっただろう。そんな中でもやはり実力のある小林海選手のパフォーマンスは素晴らしかった。

LSweb そしてボードリレーにはなんと小峯理事長の姿も!朝一の飛行機で和歌山に到着しすぐさまレースに参加されたとのこと。組織のトップがこうして現場に参加するなんて見たことがない!というショックと、ライフセービングには社会的地位も年齢も(笑)本当に関係ないのだと感動を覚えた。

 ルールを教えていただきながら観たのは、レスキューチューブレスキュー。ルールはひと通り予習をしていたが、文字と図だけではなんとなくイメージがぼんやりとしていた。やはり自分の目でレースを観るのが一番勉強になる。
実際の救助を想定した競技であり、予習の際に疑問だった「ペイシェントはどこまで協力していいのか?」という疑問もスッキリ解決。

 オーシャンマンはボード、スキー、スイム、ランを一人でこなす“海の鉄人”レースというイメージか。男子で優勝した亀ノ上選手はボード、スキーで2位をキープし、スイムで逆転。総合力が試されるとはいえ、自分の強みを持ってそれを必要な場面で発揮できることも重要だと感じる。
 例えば、私の場合、強みはやはりスイム。しかしそれ以外がまずもって練習不可能な環境(機材がない)にいるので、どうしたものかと悩む。と同時に、やはり選手として出場してみたい気持ちが心の中にあることに気付く。

ライフセービングの素晴らしさを実感

 大会中は、安全課の皆さんから競技の説明だけでなく様々なレクチャーを受けた。もちろん、見習い補佐として平藤氏からの「ハタラケ、ミナモトー」の一声を浴びながら、お手伝いさせていただくことであっという間の1日となった。

 それにしても、安全課の皆さま方の働きは凄まじい(きっと前日準備も多大にあったと思う)。当日もどこよりも早く活動を開始し、サーフ種目はもちろん、ビーチ種目も手伝い、使用する機材はどこよりも多く、またその片付けまでをするので、撤収も一番最後。

 最初にいわれたように、安全課の視点から観ることで大会全体を見渡すことができたし、安全課の皆さんのおかげで大会がスムーズに運営されていることを知ることができたのも大きな収穫だった。
 見習いからいつか作業員として活動できるようになりたいという大きな目標を持つこともできた。
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 最近、口癖のようになっている言葉がある。
 「あと10年早くライフセービングに出会っていれば・・・」
 
 アスリートにとってご法度である“たられば”を口癖にするほど、この「生命を救うスポーツ」に魅了されている。そして、LSに関わる人たちの気持ちの良さにすっかり心を奪われている。

 人が何かに取り組むときに必要なのは目標だと思う。その昔、私はオリンピックという舞台に憧れ、そこでメダルを獲ることが大きな目標だった。

 今の目標は、それぞれの立場や想いでLSに取り組んでいる人たちに技術的にも精神的にも追いつくこと。競技に触れたことで、ココロは10年前の乙女(笑)に戻ってきたようだ。






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徳島ライフセービングクラブ
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2012年発足。四国初のライフセービングクラブとして、徳島市・小松海岸でのパトロールや、吉野川での水辺の安全教室などなど「徳島県での水の事故ゼロ」を目指し、またビーチクリーンなど1年を通して精力的に活動中。徳島でライフセービングをしたい!という人は、下記まで連絡してみよう。

徳島ライフセービングクラブ
https://www.facebook.com/lifesavingtokushima
http://tokushima-lsc.com

問い合わせメールアドレス
tokushima.lsc★gmail.com
(★マークを@に代えて使用して下さい)




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第5回全日本ユースライフセービング選手権大会 競技会レポート 高校生編2013/06/12

The 5th Japan National Youth Lifesaving Championships

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中学生の部は、館山SLSC
高校生の部は、成城学園LSCが総合優勝


千葉県南房総市の岩井海岸で開催された「第5回全日本ユースライフセービング選手権大会」。

中高生を対象としたこの大会だが、まだ頼りなさの残る中学生と比べると、高校生は体格も表情もぐっと大人びる。
そんな彼らは時に、大人と遜色ないレースを繰り広げるのだった。

2013.6.9 千葉県南房総市・岩井海岸

文・写真=LSweb編集室





全日本出場選手も参加し
高校生ナンバーワンが決定!


 高校生ライフセーバーには2つのパターンがある。
 ひとつは小中学生のころからライフセービングに親しみ、地域クラブに所属しているジュニア卒業生タイプ。もうひとつは入学した高校でライフセービングと出会った部活動タイプだ。
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 ジュニア卒業生で学校のライフセービング部に所属しているパターンもあるかもしれないが、主流は前述の2つだろう。今大会に参加したチームでは、西浜SLSCがジュニア卒業生タイプの代表、成城学園LSCが部活動タイプの代表ということになるだろうか。

 ジュニア卒業生タイプは、小さいころから海に親しんでいるため、クラフトの扱いが上手く、イン・アウトの基本もできている。だから、どちらかというとオーシャン競技で力を発揮する選手が多い。大学生や社会人の先輩たちと一緒に、全日本クラスの大会に出場した経験を持つ選手も少なからずいる。
 一方、部活動タイプは、海での練習時間に限りがあるため、まずはプール競技やビーチ競技で結果を出す選手が多いようだ。

 その傾向が顕著に表れたのが、今大会だった。

 最初に行われたサーフレース高校生女子では、西浜SLSCの上野真凜選手が1位、茅ヶ崎SLSCの名須川茉莉乃選手が2位、柏崎LSCの髙橋志穂選手が3位となった。全日本クラスの大会でも活躍する3人が、頭一つ抜き出た格好だ。彼女たちは続くボードレースでも上位を独占。ただし今度は、髙橋選手が1位、上野選手が2位、名須川選手が3位という順番だった。
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 サーフレース、ボードレースでともに4位となったのが、柏崎LSCの前川紗槻選手。髙橋選手や、今春から大学に進学した速水 愛選手などに続く、同クラブのジュニア卒業生第2世代だ。
 高校生女子のサーフレースでは、成城学園LSCの勝又日葉選手が5位、世田谷スイミングアカデミーの水落遊理選手が6位と健闘。ボードレースでは湯河原LSCの伊藤優子選手、吉本彩乃選手が5位、6位に入賞した。
 
 高校生男子で共にサーフレースとボードレースのメダルを獲得したのが、ユースの強化指定選手でもあるバディ冒険団LSCの森野友也選手と永石哲朗選手だ。森野選手はサーフレースで2位、ボードレースで3位、永石選手はサーフレースで胸差の3位、ボードレースでは見事に1位を獲得した。
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 その2人にサーフレースで勝利したのが、山形LSCの半澤和也選手だ。
「僕は競泳をやっているので泳力では負けない自信がありました。ただ、インやアウトは苦手。だから、スタート直後は速い選手に遅れをとらないようについていき、スイムブイのちょうど中間ぐらいで逆転に成功したのです。ところが、ブイを回ってからゴールの旗を見失ってしまいました。
 ずっとヘッドアップで泳いでいましたけど、焦りました。後ろを気にしている余裕はまったくありませんでした。ビーチに上がったら、走れ、走れという声が聞こえてきて、夢中で走ったんです。すぐ後ろに人がいるのかと思いましたが、実際は少し離れていましたね」
 とレースを振り返った半澤選手。
 山形LSCのメンバーは、競泳や水球を主体に活動し、週1回、プールでライフセービングの練習をしているそうだ。

 「マネキンを引いたり、ビート板で障害物を設置したりしてトレーニングしています。水に入る前には必ずCPRの練習をします。自分の能力のひとつとして、CPRができるのはとても良いことだと思っています」
 と話す半澤選手は、今回27人で参加した山形LSCのキャプテンとしてがんばった。2回目の参加となる山形LSCは、東北でもライフセーバーの芽がドンドン育っていることを実感させてくれる、頼もしいクラブだった。

 高校生男子サーフレース4位は、一人で参加した三多摩LSCの森岡岳大選手。またボードレースでは、柏崎LSCの片山雄起選手が2位に入る健闘を見せた。
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 ジュニア卒業生タイプの活躍が目立ったオーシャン競技とは反対に、ビーチ競技では、部活動タイプの高校生たちが大活躍した。

 高校生女子ビーチフラッグス。
 決勝に進出したベスト8の顔ぶれは、成城学園LSCが3人、昭和第一学園高校LSCが3人、そして館山SLSC、湯河原LSCが1人ずつだった。
 
 競技が始まる前に、「私たち1人ずつだから、なんか圧倒されちゃって……」と肩を寄せ合っていたのが、館山SLSCの深作 萌選手と湯河原LSCの吉本彩乃選手だ。
 いざ競技始まると、2人はベスト4まで順調に勝ち上がった。だが、昭和第一学園高校LSCの小形梨沙選手、成城学園LSCの今井夏樹選手も速い。ベスト3を決めるレースで吉本選手が敗退。続いて今井選手が負けると、深作選手と小形選手の一騎打ちとなった。
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 スタート前のルーティンワークが一定で、落ち着いた表情の深作選手。昨年のチャンピオンである小形選手。どちらも集中して最後の一本に望んだ。笛の合図で体を回転させ、走り出した2人。最後までどちらが勝つか分からない接戦となったが、砂煙の後にフラッグを握っていたのは、上手く体を入れた深作選手だった。
 お父さんが陸上選手だったという深作選手。俊足DNAだけでなく、競った時の駆け引きにセンスが感じられた。

 持久力が問われる高校生女子1kmビーチランでは、成城学園LSCの沖廣南美選手と北川 恵選手がワンツーフィニッシュ。世田谷スイミングアカデミーの水落選手が3位と、心肺能力の高さを発揮した。
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 高校生男子1kmビーチランは、昭和第一学園高校LSCメンバーが入賞者8人のうち6人という圧倒的な強さを見せた。表彰台も同クラブが独占。中でも2位以下に差をつけて優勝した河上尚輝選手は、昨年秋の全日本でも2位となった実績を持つ選手だ。

 流通経済大学LSCの主将で、母校の昭和第一学園高校で教育実習をしている園田 俊さんは、「ビーチ種目だけでなくオーシャン種目でも、僕らの時より、確実にレベルが上がっていますよ」と、後輩たちの活躍に頬を緩ませた。

 高校生男子ビーチフラッグスでは、昭和第一学園高校LSCの3人と、成城学園LSCの5人という部活動対決が実現した。その中で、決勝レースの最初から目を引く動きをしていのが、成城学園LSCの高梨友美生選手だ。オフィシャルとしてスターターを任されていた西浜SLSCの植木将人選手も、「彼は速いね」と太鼓判を押すキレの良さだった。
 高梨選手が頭一つ抜けた状態でレースは進行し、最後は選手宣誓をしたクラブメイトの赤尾翔一郞選手との勝負に。しかし、最後まで勢いの落ちなかった高梨選手が確実に最後のフラッグを手中に収めた。
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「ずっと植木さんを研究して練習してきました。植木さんはまだまだ雲の上の存在ですが、今後は着々とステップアップしていきたいと思っています」と高梨選手。昨年秋の全日本は? という問いかけには「良く言えばベスト32、悪く言うと2次予選敗退です」と軽妙なトークで応じてくれた。

「友美生は、本当にずーっとビーチフラッグスを研究しているんです。僕が負けるのも当然ですよ」と話すのは、最後の1本を争った赤尾選手。
「彼は自分でもビデオを撮るし、友だちが撮った映像なども手に入れて、ずっと見ています。見ながら、延々と解説してくれる。私には、とても無理ですよ」と言うのは、ユースの世界選手権でビーチフラッグス銀メダルを獲得した、成城学園LSCの先輩である利根川莉奈さんだ。
 良い意味で“ビーチフラッグスオタク”の高校2年生、高菜選手の今後に注目したい。

 高校生の団体種目は、ボードレスキューとレスキューチューブレスキューの2種目が行われた。
 レスキューチューブレスキュー男子は、高梨選手もドラッガーとして奮闘した成城学園LSCが優勝。同じく女子も成城学園LSCが制した。
 ボードレスキュー男子は昭和第一学園高校LSC、山形LSC、成城学園LSC、ボードレスキュー女子は湯河原LSC、柏崎LSC、成城学園LSCという順番だった。
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 表彰式では、今年から総合順位も発表、表彰されることになった。栄えある初代総合優勝は、中学生の部が館山SLSC(80点)、高校生の部が成城学園LSC(112点)であった。
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 高校生ライフセーバーの育成はまだ発展途上だが、最近は、高校生でもベーシック資格が取得できるなど環境に変化が見られる。資格を取得し、海水浴場のパトロールに参加する機会が増えてくれば、ジュニア卒業生タイプと部活動タイプの垣根も徐々になくなっていくはずだ。
 部活動タイプの高校生でもオーシャン競技が得意な選手が現れるだろうし、ジュニア卒業生タイプの高校生が、例えば、学校の陸上部や水泳部に所属すれば、得意分野をさらに伸ばすことにも繋がるだろう。

 いずれにしても、本人のやる気と努力、そしてコーチや保護者のサポートが、高校生の可能性を大きく伸ばす重要なファクターとなることは確かだ。
 そして彼らのモチベーションを上げる一つの材料が、高校生ナンバーワンを決める今大会のような競技会なのである。LSweb



★第5回全日本ユースライフセービング選手権大会 成績表



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第5回全日本ユースライフセービング選手権大会 競技会レポート 中学生編2013/06/11

The 5th Japan National Youth Lifesaving Championships

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北は岩手から、南は沖縄まで
20チーム211人が参加したユース全日本



6月9日、千葉県南房総市の岩井海岸で「第5回全日本ユースライフセービング選手権大会」が開催された。

年々規模が拡大するこの大会。今年は関東地方を中心に、岩手、山形、そして沖縄から、200人を超える中高生が参加した。

2013.6.9 千葉県南房総市・岩井海岸


文・写真=LSweb編集室





個人・団体合わせ、計16種目を実施


LSweb 東京湾に面した岩井海岸は、遠浅で波も比較的穏やかなことから、臨海学校や海浜実習が盛んに行われる場所だ。海水浴シーズンは、日本体育大学LSCとその卒業生を中心とした、岩井LSCがガードを行っている。大会当日も、日体大LSCのコーチやメンバーが集まって自主練習を行っていた。

 その岩井海岸で初開催となったのが、中学生、高校生を対象としたユースライフセービング選手権だ。この大会、元々はジュニア(小中学生)でもなく、大学生でもない、ライフセービングに接する機会の少ない高校生たちに、ライフセービングの楽しさを知ってもらいたい、続けてもらいたいと、JLA学生委員会が立ち上げた「高校生プログラム」から発展したもの。だから今回も、大会運営の随所で学生委員たちが奮闘していた。

 また、強化指定選手であるハイパフォーマンスチームのメンバーたちも、ビーチフラッグス会場でトンボをかけたり、競技運営に携わったりして大会を手伝っていた。普段は競技する側の彼らが、オフィシャルからの指示でいそいそと働く姿は新鮮。また、憧れの強化指定選手を間近で見ることができたユースの中には、一緒に写真撮影してもらい、はにかんだ笑顔を見せる子もいた。
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 そんな和やかな場面も数多く見られたユース選手権だったが、勝負は真剣そのもの。大人も顔負けの接戦が繰り広げられた。

 中学1年生を対象としたフレッシュマン男子ランスイムランでは、下田LSCの土屋俊輔選手、木下龍太郎選手がワンツーフィニッシュ。2人は続くフレッシュマン男子ビーチフラッグスでも1位、2位と活躍した。
 フレッシュマン女子ランスイムランでは、湯河原LSCの室伏郁花選手が後続に差をつけて優勝。彼女は中学3年生までがエントリーした、ニッパーボードレースでも優勝するなど、将来が楽しみな活躍をしてくれた。
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 フレッシュマン女子ビーチフラッグスでは1位が吉武華梨選手、2位が石井優愛選手、3位が原 香織選手と1〜3位までを成城学園LSCが独占した。幼稚園から大学院までを擁する成城学園では、近年、学内でライフセービングが人気で、部員数も増加の一途をたどっているそうだ。今大会にも中学、高校合わせて74人がエントリーした。
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 中学まではバレー部と女子バスケットボール部で活動していたという、同学園の高校2年生女子4人に、なぜライフセービング部に入ったのかを聞いたところ、「ライフはほかの部活となんか違う。応援したくなる部活っていうか……」という答え。

 「でも最初は水着でやるのがすごく恥ずかしかった! 水に入る直前まで、ずーっとタオルを巻いていたもん。えっ今? 今は平気。慣れた(笑)。男子も慣れたんじゃないかな。でもね、今年の1年生は恥ずかしくないみたい。だって、みんなスタイルいいんだもん」と言いながら、後輩たちに声援を送っていた。

LSweb 中学生男子のサーフレースとニッパーボードレースで優勝したのは、西浜SLSCの皆川貴海選手だ。小学生のころからジュニアプログラムに参加し、最近はニッパーボードではなくマリブボードで練習しているという、長身の中学3年生。遠浅の岩井海岸の地形を利用し、ウェーディングやドルフィンスルー、バニーホップなどを軽々こなし、スタートからフィニッシュまで安定した力を発揮した。
 レース後、「今日は久しぶりのニッパーボードで、戸惑った。マリブとは浮力も違うし、うねりをつかむのがちょっと難しかったかな」と話してくれた皆川選手だった。

 海での経験値の差が、そのまま順位に現れるのがユース世代といってもいいだろう。サーフレース中学生男子の部に参加した、世田谷スイミングアカデミーの板場貴大選手は、ジュニアオリンピックの標準記録を突破した選手だが、今回はサーフレース6位という結果に終わった。
 刻々と変化する自然環境の中で行われるのが、ライフセービング競技の楽しさであり、難しさでもある。ホームゲレンデとは勝手が違うこともたくさんあるはずだ。

「岩井の海はずっと浅かったので、本当はドルフィンスルーをすれば良かったんだけど、僕が練習している熱川の海はすぐ深くなるので、ウェーディングとか、ドルフィンスルーの練習があまりできない。それで今日は苦戦しちゃった」(日馬孝昌選手/熱川LSC)

「サンセットビーチは沖にリーフがあるので、波がない。特に夏は全然ない。今日は波がある環境だったので、少し緊張した」(與那嶺瑠奈選手/北谷公園サンセットビーチLSC)

「海で練習すること自体が少ないし、学校のプールは水泳部が使っているので、そこもあまり利用できない……。今日の結果は惨々だったけど、海に入れて楽しかった」(市村直也選手/攻玉社LSC)
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 「いやぁ〜それでも恵まれているよ〜。東北はまだ寒くて海に入れないからね」と話すのは、中学生、高校生1人ずつを引率してきた盛岡LSCの松原浩一代表だ。
 
LSweb プールでの強化練習をへて、この大会に参加した中学生の鈴木愛香選手は、サーフレース中学生女子で見事2位。1位の選手との差は僅かだった。残念だったのは、時間の関係で表彰式まで残れなかったこと。ほかの選手より一足早く、銀メダルを手に帰路へとついた盛岡チームだった。

 このレースで1位となったのは、下田LSCの今村麻香選手。
「スタート直後は前に人がたくさんいて、ちょっと焦っちゃった。ブイを回るころに少し人が少なくなって、自分が前に出たというよりは、皆が後ろにいったという感じだったかな。盛岡の選手がずっとリードしていたけれど、ランでがんばって走って抜くことができた」と笑顔を見せた。

 下田LSCでジュニアを担当するのは、坂部 悠・琢兄弟。
「下田LSCの場合、学校の部活や習い事を優先してジュニアプログラムを運営しています。ただ、僕たちは地元の人間ですし、子どもたちも地元の子なので、練習したいという希望があれば朝練などしています」
 自身も下田LSCジュニア出身だという坂部さん。天候に応じて浜が選べるのも、下田の利点だ。

 中学生男子のビーチフラッグスは、西浜SLSCの並松竜太郎選手、同じく西浜SLSCの和田拓海選手、そしてバディ冒険団LSCの森野郁也選手がメダルの色をかけた戦いを演じた。
 
 西浜SLSCにはビーチフラッグスの第一人者、植木将人さんや、その次を狙う小田切伸矢さんなどなど、この道のスペシャリストが多数いる。そんな環境からか、同クラブにはビーチフラッグスの強い中学生が多いが、今回は仲間同士、切磋琢磨する環境に森野選手が割って入り2位を獲得。優勝は並松選手、3位は和田選手だった。
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 一方、中学生女子のビーチフラッグスは、館山SLSCと下田LSCがベスト5を独占した。その中で最後のフラッグを手にしたのは、館山SLSCの高山萌々選手だ。学校の陸上部に所属しているという高山選手は「今日は、飛び込んでしっかりフラッグをつかむことと、スタートの反応が良くきた」と自分のレースを振り返った。
 
 館山SLSCには、自身もビーチ競技の選手として活躍する石川智也コーチがいる。コーチの熱心な指導と、今年から中学生女子3人で練習ができるようになった環境が、高山選手の飛躍に繋がったようだ。

 1kmビーチラン中学生男子では、山形LSCの武田凉平選手と、二宮LSCの小又忠士選手によるデッドヒートが、最後の最後まで続いた。文字通り抜きつ抜かれつのレースの末、胸の差で先にゴールに飛び込んだのは武田選手。その瞬間、山形応援団から大歓声が沸いた。
 
 片道500km、往復1000km。マイクロバスを運転し、選手たちを引率してきたコーチ、保護者の疲れも一気に吹き飛んだ瞬間だった。
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 団体競技のビーチリレー中学生男子は西浜SLSC、ビーチリレー中学生女子は下田LSCが優勝。スイム→ボード→ランと繋いだタップリンリレーは、男子が下田LSC、女子が館山SLSCの優勝で幕を閉じた。

 
★LSユース・レポート高校生編へ続く……。




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第26回 全日本ライフセービング種目別選手権大会 競技会レポートVol.22013/06/05

The 26th Japan National Lifesaving Individual Championships Report Vol.2

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どんな状況にも対応できる
頼もしいライフセーバーを目指して



波のサイズも落ち、カレントも弱まり、昼ごろからは風もオンショアとなった大会2日目。

ラフなコンディションでの予選を勝ち抜いたライフセーバーたちは、静かな闘志を内に秘め、決勝レースにのぞんだ。

2013.6.1-2 静岡県浜松市・舞阪海岸



文・写真=LSweb編集室





混戦の男子オーシャン種目
そして、唯一の団体競技を制したのは?


 LSweb大会初日は波と風、そして横に流れる強いカレントに苦戦した選手が多かったが、決勝に進出した選手たちはさすがに力があり、見応えあるレースが展開された。

 男子のオーシャン種目で、最初に決勝が行われたのがサーフレース。スタートから飛ばしたのが、長身の中本直也(拓殖大学LSC)だ。今年、大学4年生になった中本は、スイムの実力者。終盤までトップを守っていたが、最後の最後で波に乗ってきた益子進一、菊地 光の九十九里LSC勢に追いつかれ、逆転されてしまった。
 
 LSweb優勝は益子。
「全日本クラスでの優勝は初めてなので、素直に嬉しいです」
 という益子は、社会人3年目。学生時代より少し丸顔になったが、上手く練習できる環境を築けたようだ。2位は社会人1年目の菊地、中本は惜しくも3位だった。

 前日よりはサイズダウンしたが、大会2日目も波のあるコンディション。うねりや波を上手にとらえるテクニック、波に乗り続けるハンドリング力、そして同じ波に乗った選手たちの中から、いかに前に出るかの判断力と経験値が、勝敗の分かれ道になった。

 1次予選、2次予選、そして準決勝を経て決勝レースが行われたのが、男子ボードレースだ。参加233人の頂点に立ったのは、楽々と波に乗り続けた長竹康介(西浜SLSC)だ。クラフトに乗る姿は、円熟味すら感じさせる安定感だった。レースを終えた長竹は、
「あーよかった、という感じです。ほかのレースは運がなかったので(笑)」
 とホッとした表情を見せた。
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 2位は大学4年生の高岡洋介(国士舘大学LSC)が入った。
「前半は速い人についていき、後半はうねりを捕まえていくと考えていました。康介さんは全然見えませんでしたが、最後、3人が同じ波に乗った時に絶対に乗り続けよう、そして波から下りる場所もココ! と決めてやりました」
 と興奮した口調でレースを振り返ってくれた。
 3位は昨年も同順位だった小出大祐(東京消防庁LSC)、4位は全日本チャンプで、今年から大阪での大学生生活を送っている小林 海(大阪体育大学LSC)だった。

 女子同様、ドライフィニッシュが採用されたサーフスキーレースでは、スタートから飛び出した篠田智哉(勝浦LSC)が終始レースをリードし、種目別のタイトルを手にした。国際武道大学出身、千葉県勝浦市で消防士として働く篠田は、
「スタートが上手くいったので、落ち着いて漕ぐことができました。最後はいかにうねりをつかむかだと思っていたので、良いうねりが来た時に、ここで出し切るぐらいの気持ちで漕ぎました。それで抜けることができたのです」
 と日に焼けた顔を、実に嬉しそうにほころばせた。
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 篠田の後は波に巻かれて沈艇が続出し、大混戦に。次にゴールラインを切ったのは後関裕輔(東京消防庁LSC)、続いて荒井洋佑(西浜SLSC)、草柳尚志(和田浦LSC)、そして長竹だった。
 後関はラダーが海底に刺さり、スタートで大きく出遅れたが、ベテランらしくきっちりリカバリーして表彰台に上った。ちなみに、2位の後関から5位の長竹までは日本体育大学OBという顔ぶれだった。
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 今大会のようなコンディションで、スキーが接触するような場面の対処方法を、海外でのレース経験も豊富な飯沼誠司HPTコーチに聞いたところ、
「あの状況では、巻き添えを食うのは仕方がないですね。僕がそうなったら、ドライフィニッシュの利点をつかって、当てられた瞬間にスキーを捨て、その波に乗ってボディーサーフィンします」
 という答え。オーストラリアのレジェンドライフセーバー、トレバー・ヘンディーも使う技だそうだ。

 オーシャンマンレースでは上位3人の順位がはげしく入れ替わった。
 まず、スキーでリードしたのが長竹だ。続くスイムでは、内側で先行する長竹を真ん中から落合慶二(東京消防庁LSC)、外側から三木翔平(湯河原LSC)がとらえ、最終のボードへと続けた。
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 LSweb観衆が見守る中、トップで戻ってきたのは三木。長竹、落合を押さえての優勝だったが、本人はあまり実感がないようで、
「康介さんはどこ? と探しながらボードに乗っていたら、なんか勝っちゃいました」
 とポカンとした表情。その横で、クラブメイトの西山 俊が感激の涙を流すという、ツッコミどころ満載の感動シーンが展開されたのだった。
 
 波のあるコンディションでのボードの上手さには定評がある三木。
「自分的には、一生懸命練習したボードレースがダメだったことのほうが悔しくて……。あっ、でもオーシャンマンでは思ったとおりのコース取りができました」
 と勝因をあげた。

 今大会、唯一の団体種目であるオーシャンマンリレー/オーシャンウーマンリレーも白熱した戦いが繰り広げられた。
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 オーシャンウーマンリレーでは、スキーで下田LSCの小松崎あゆみと西浜SLSCの篠が同じ波に乗ってきたが、最後に篠が沈。その間に日本大学SLSCの三井が2位に上がった。ところが、次のスイムで西浜SLSCの高校2年生、上野真凜が波に乗り一気に逆転。ボードの上村真央、ランの佐々木聡美と繋ぎ、この種目を制した。

 一方、オーシャンマンリレーは目まぐるしく順位が変わる展開に。
 まずスキーで絶好調の勝浦LSC、篠田が飛び出すと、その後ろに西浜SLSCの石川修平、九十九里LSCの出木谷啓太が続いた。続くスイムで、拓殖大学LSCの中本と流通経済大学LSCの大出 旭が先頭に躍り出たが、ボード前半で湯河原LSCの青木将展、西浜SLSCの荒井洋佑が逆転に成功。最終ブイを回るころには、青木がリードを広げていた。
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 ところが、そこから一波乱が起こる。ブイを回ってうねりを掴みかけた青木が、沈をしてしまったのだ。あとで聞いたところ、ブイのロープにフィンを引っかけてしまったのが原因だそうだが、荒井がみるみる差をつめ同じ波に乗ってビーチを目指す展開に。勝負はラン走者へ託された。
 
 僅かの差で先に走り出したのは、湯河原LSCの深井俊光。その後ろ姿を追うのが西浜SLSCの小田切伸矢だ。昨年秋の全日本でも同じようなシーンがあった。その時には、ゴール間際で小田切が逆転に成功したが、今回は深井が逃げ切り湯河原LSCに勝利をもたらした。

勝浦LSC、竹澤康輝
ビーチフラッグスでグランドスラム達成


 LSwebビーチ種目もオーシャン種目に負けず接戦が繰り広げられた。
 舞阪海岸の砂浜は、砂粒がしっかりした重量感のある柔らかさ。大会会場でトレーナーステーションを開設し、選手のケアに当たってくれた国際武道大学の笠原政志トレーナーチームヘッドコーチによると、
「シーズン前ということもあり、砂浜でしっかり練習してきている選手は少ないと思います。舞阪海岸のビーチは案外、柔らかいので、競技を重ねていくと思った以上に筋肉に疲労が溜まってくるでしょう。つったり、肉離れを起こす選手がいるかもしれませんね」
 ということだった。

 そんな舞台で行われた女子ビーチスプリントの決勝レースでは、思わぬダークホースが優勝を手にした。スイムが得意な栗真千里(銚子LSC)だ。競泳出身の栗真は、これまで個人でビーチ種目に出場したことはなかった。しかし今回、思うところあってビーチスプリント、ビーチフラッグスにエントリー。ビーチフラッグスでも準決勝まで進む健闘を見せた。

 「日本代表として世界大会に出場したいのです。そのためには、スイムだけではないということをアピールしなければと思って」
 と栗真。ビーチ競技の経験は、学生時代にビーチリレーに出ただけで、社会人となった今は、夜しか練習できる時間がないそうだが、小柄で華奢な体型からは想像できないガッツと、身体能力の高さを持っているのだろう。1位を告げられた瞬間、満面の笑みで両手を高く掲げた。

 7位に入賞した水間菜登(勝浦LSC)も、栗真と同じく水陸両用?!を目指す選手。すでに代表入りしている長身の水間と小柄な栗真。そんな2人の日の丸コンビが見られる日も来るのかもしれない。
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 俊足自慢が集まった男子は、石井雄大(日本体育大学LSC)が昨年秋の全日本に続き優勝。西浜SLSCの小田切が2位。3位にはこの種目で初めての表彰台となった竹澤康輝(勝浦LSC)が入った。

 女子2kmビーチランでは、陸上部出身の山田美月(日本体育大学LSC)が力を発揮して優勝。2位は佐々木聡美(西浜SLSC)、3位には廣江史子(大阪体育大学LSC)が入った。
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 男子は中川慎太郎(流通経済大学LSC)が残り300mでラストスパートをかけた。勝利を確信したのか、ゴール前ですでに泣きそうな顔になった中川。
「がんばっているのになかなか成績がついてこないクラブのために、ここは自分が勝たなければならないとがんばりました」
 と震える声で話してくれた。
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LSweb 残すは男女のビーチフラッグスのみ。知名度の高い競技とあって、たくさんのギャラリーに囲まれながらレースが行われた。

 女子の注目は、昨年、ユースの世界大会で銀メダルを獲得した利根川莉奈(成城学園LSC)、学生チャンピオンの但野安菜(勝浦LSC)、インカレ2位の川崎汐美(日本女子体育大学LSC)など。大学生3人は最初から好調で、スピード感あるレースを展開していたが、5回戦で利根川が敗退。社会人の高見澤春香(今井浜LSC)が試合巧者ぶりを発揮し、銅メダルを獲得した。
 
 インカレと同じ顔合わせとなったラストレースは、どちらがフラッグを取るか最後まで分からない展開となったが、最後は但野が競い勝った。
「クラブ以外での練習はなかなかできませんが、その分、競技の動画などを見て研究しています」
 と言う但野は大学3年生。高校まで剣道部だったという2位の川崎は大学2年生。2人のライバル関係はとうぶん続きそうだ。
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 元世界選手権銀メダリストの植木将人(西浜SLSC)、昨年の種目別チャンピオン和田賢一(式根島LSC)、インカレと全日本を制した竹澤(勝浦LSC)、さらに小田切(西浜SLSC)や、生きの良い大学生たちが顔を揃えた男子ビーチフラッグス。
 
 ベスト3を決める6回戦で波乱が起こり、会場がざわついた。なんと、優勝候補の一人である和田が、スタートの時に手の甲に顎がついてないと不正スタートを取られ敗退。決勝は、一時代を築いた植木と、大学4年生、竹澤の一騎打ちとなった。
 注目の一戦を制したのは、竹澤。ランで植木を押さえての完勝だった。

 これで竹澤はインカレ、全日本、種目別のグランドスラムを達成。大学生として初の快挙を成し遂げた。
「植木さんは憧れの人。でも、僕も強化指定選手に選ばれていますから、がんばらないと……。今まではスプリントが苦手でしたが、今回はビーチスプリントでも3位になれました。そこを強化したことが、ビーチフラッグスの勝利につながったと思います」
 と竹澤。まぐれで三連勝はできない。竹澤時代、到来か!?
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●男子ビーチフラッグス 優勝者コメント



★ ☆ ★
 
 
 波のあるコンディションで、見応えのあるレースが行われた今回の種目別。確かにラッキー、アンラッキーが起こりやすい状況ではあるが、それ以上に実力差がハッキリした大会だった。
 本当に力がある選手は、アクシデントを回避する冷静な判断力を持っているし、アクシデントに巻き込まれてもきちんとリカバリーできるパワーとテクニックを持っている。そんな場面を随所で見ることができた。
 
 パトロールシーズン前に行われる種目別は、今の自分の技量を知り、来るべきシーズンに備える大会でもある。ならば可能なかぎり、こういうタフなコンディションで競技ができる会場を選んでほしいと思う。
 来年は千葉県の九十九里本須加海岸での開催が決まっている。本須加海岸はサーフポイントとしても人気で、また横に流れるカレントが強い場所でもある。来年、どんなレースが展開されるのか今から楽しみだ。

=敬称略。




★第26回 全日本ライフセービング種目別選手権大会 成績表








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