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第26回 全日本ライフセービング種目別選手権大会 競技会レポート Vol.12013/06/04

The 26th Japan National Lifesaving Individual Championships Report Vol.1

LSweb

パトロールシーズン直前
遠州灘の洗礼を受けたライフセーバーたち


6月最初の週末、静岡県浜松市の舞阪海岸で「第26回全日本ライフセービング種目別選手権大会」が開催された。

各種目の予選が行われた大会初日は、波も大きく、さらに強い風と潮流というハードコンディション。実力が試される、今シーズン最初の海での全日本となった。

2013.6.1-2 静岡県浜松市・舞阪海岸


文・写真=LSweb編集室




実力の差がハッキリした
タフなコンディションでの予選


 LSweb大会会場となった舞阪海岸は、浜名湖と遠州灘をつなぐ今切口の東側に位置している。夕陽スポットとしても知られ、また広々とした砂浜からの投げ釣りや、コンスタントに吹く風を目当てに、ウインドサーファー、カイトサーファーが集まる場所でもある。
 
 一方、遠州灘(静岡県の御前崎から愛知県の伊良湖岬までの約110km)は昔から、海の難所として恐れられている海域だ。年間を通して波が荒く、特に冬は西からの強風で海が時化ることが多い。さらに強い離岸流が随所で発生するため、遠州灘に面した静岡県側の海岸は、夏でも全域、遊泳禁止となっている。
 
 つまり、風光明媚な舞阪海岸であっても、海水浴場は開設されないということなのだ。少しもったいない気もするが、清水海上保安部の発表によれば、平成13年から23年までの10年間、遠州灘を望む海岸での、マリンレジャーにともなう事故者数は130人、そのうち離岸流による事故者数は30人(死者6人)におよんでいる。

 LSwebそんな遠州灘の洗礼を受けることになったのが、26回目にして浜松市で初開催となった種目別選手権大会だ。大会初日は、10m/sオーバーの東〜北東の風と、東から西へ流れる強い潮流、そしてサンドバンクと割れる波というタフな状況の中、オーシャン種目の予選が次々とスタートした。

 第一の関門はインでの沖出し。クラフト種目の場合、ここで沈してしまうとカレントにつかまり、あっという間に西(沖に向かって右)へと流されてしまう。何度も沈した揚げ句、ブイまで到達できずにDNF(Did Not Finish=競技終了)となる選手も出るコンディションだった。
 沖出しに成功しても、スイムブイ手間で水深が浅くなり、潮の流れが再び速くなっている。右へ、右へと流される状況を修正しながらレースを進めていかなければならない第二の関門だ。
 
 そして最後の難関がアウトからビーチへのエントリー。ここでいかにクラフトをコントロールし、波に乗れるか、沈せずに戻ってこられるか。技量の差が出るポイントだろう。

 青木克浩HPTコーチによれば「上手い選手が勝つコンディション」ということになる。
 7月に日本代表としてワールドゲームスに出場予定の長竹康介(西浜SLSC)は、「久々に波にあるコンディションを楽しんでいます」と落ち着いた表情。消防学校で勉強中の西山 俊(湯河原LSC)は、「テクでごまかせるコンディションです」となんだか楽しそうだった。
 そうはいっても、ベテラン勢でも巻き添えを食らって沈をする場合があり、クラフトにダメージを受けた選手も複数いたようだ。
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 ただ、幸いにも大きなケガに繋がるクラッシュはなく、無事、2日間の日程を終えることができたのは、サーフスキーレースでドライフィニッシュ(陸上に設定されたゴールラインを切るフィニッシュ)を採用するなど、臨機応変に対応した競技運営スタッフ、ずぶ濡れになりさらに風に吹かれながらもジャッジをしたオフィシャル、そしてチューブ、ボード、IRB、PWCを総動員して海上を縦横無尽にカバーした安全課のスタッフのおかげだろう。
 こうした裏方の皆さんの堅実な働きに、改めて敬意を表したい。
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オフィシャルの皆さん

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安全課の皆さん


日大SLSC、三井結里花
難しいコンディションで三冠達成


 決勝レースが行われた大会2日目は、風も収まり、波もサイズダウン。東から西へのカレントも少し弱まった。そん中、オーシャン種目の最初の決勝がスタートした。

 49人が参加した女子サーフレース決勝。その中には4人の高校生の姿もあった。そして並みいる強豪を抑え表彰台に上ったのが高校3年生、3位の髙橋志穂(柏崎LSC)だ。
 小柄で幼さの残る髙橋は、昨日のオーシャンウーマン予選でスキーの沖出しに大苦戦。半ベソをかきならがも最後まで諦めなかった姿が印象的だったが、サーフレース決勝では、絶好調の三井結里花(日本大学SLSC)、元全日本チャンプの植松知奈津(湯河原LSC)といった実力者に続き、見事3位に。
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「いつも指導してくれる青木コーチに少し恩返しができました」
 とはにかみながら、健気なコメントを聞かせてくれた。
 髙橋はサーフスキーレースでも4位、オーシャンウーマンでも5位と、エントリーした種目すべてで入賞を果たす健闘ぶり。扱いの難しいサーフスキーを高校生時代から乗りこなす器用さと、最後まで諦めない粘り強さ、そして練習熱心な姿勢と、将来が楽しみな選手である。

 オーシャンウーマン/オーシャンマンレースはスキー→スイム→ボードの順番で行われた。
 オーシャンウーマンレース、最初のスキーでは篠 郁蘭(西浜SLSC)、名須川紗綾(茅ヶ崎SLSC)、久保美沙代(和田浦LSC)、三井の4人が先頭集団を形成。スイムに入るとすぐに三井が逆転に成功し、そのままリードを広げた。最後のボードで篠が猛追をかけるが、三井が危なげなく逃げ切りサーフレースに続き優勝。以下、篠、名須川が続いた。
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「郁蘭さん、ボードが速いのでドキドキしながらレースをしていました」
 と言う三井。
「スイムであそこまで開いちゃうと厳しいですね」
 と篠。就職、結婚でしばらく競技から遠ざかっていた彼女だが、元日本代表の実力は健在だった。

 その篠と名須川がデッドヒートを繰り広げたのが、サーフスキーレースだ。安全面への配慮からドライフィニッシュが採用されこのレース。波打ち際の攻防が勝敗を分けた。LSweb
 
 同じ波に乗り、浜へと向かってくる篠と名須川だったが、残りわずかのところで接触。2艇が沈している間に、すぐ後ろにつけていた三井が抜け出した。沈したスキーに行く手を阻まれ、前へと進めない篠と名須川を尻目に、インサイドから久保、アウトサイドから猪又美佳(茅ヶ崎SLSC)がやってきた。

「ハンドラーの誰かが、走れば表彰台だよ! と叫んでいたので、慌てて走りました」
 と話す3位の猪又は、
「スキーが沈しているのは見えましたけど、人はもうゴールしているものだと思っていましたから」
 と続けた。漁夫の利といえばそうかもしれないが、トップにしっかりとついていなければ上ることのなかった表彰台だ。運も実力のうちである。

 一方、久保は、2艇が波に巻かれていく瞬間を目にし、2位を確信したそうだ。昨年のこの大会、そして秋の全日本といずれも2位だった久保は苦笑しながら、
「う〜ん、だから続けているのかもしれません」
 とポツリ。キツイ練習に耐えられるのも、その悔しさがあるからという意味なのだろう。今のところは万年2位にながら、久保の存在感は確実に増している。継続は力なり。彼女のさらなる奮闘が楽しみだ。
 LSweb昨年、スキーとオーシャンウーマンの二冠を達成した名須川は、
「(アンラッキーも含め)これが今の実力です」
 と潔く負けを認めた。

 ここまで三冠の三井。オーシャン種目全制覇の期待がかかったボードレースでは、アウトでの混戦に巻き込まれ、表彰台を逃した。得意のボードレースで優勝したのは篠。
「なんとか1本とれました」
 と笑顔を見せた。名須川はここでも僅差の2位。3位には今年から西浜SLSCに移籍した上村真央が入った。
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 四冠達成を逃した三井だが、ボードレースは8位。2kmビーチランは7位、オーシャンウーマンリレーでは日大SLSCが3位と、エントリーしたすべての種目で入賞を果たした。
 大会2日目の午後は、次から次へと決勝レースが行われ休む間もない。それでも、
「学生最後なのでいろいろ挑戦してみようと、2kmビーチランも出ることにしました」
 と朗らかに話し、しっかり入賞してしまう三井には脱帽である。教育実習中で練習時間があまりとれないという彼女だが、どのレースが終わっても、
「楽しかったです」
 と疲れを感じさせず、話しを聞いたこちらまでが、なんだか元気な気分になった。楽しむこと、それが三井の強さの原動力なのであった。



=敬称略。競技会レポートVol.2に続く




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第15回 神奈川県ライフセービング選手権大会
湯河原ライフセービングクラブが総合優勝!
2013/05/31

LSweb 5月26日に神奈川県三浦市の三浦海岸にて開催された、第15回 神奈川県ライフセービング選手権大会。昨日(5月30日)、主催者である神奈川県ライフセービング連盟より、総合成績に変更が生じた旨が発表された。

 当初、西浜SLSCと伝えられた総合優勝だが、再集計の結果、湯河原LSCが総合優勝であることが分かった。正式な順位は、優勝:湯河原LSC、2位:西浜SLSC、そして3位:湘南ひらつかLSCである。

※詳細は神奈川県ライフセービング連盟のホームページ(http://www.lifesaving.ne.jp/)に発表されているので、そちらをご覧いただきたい。



 今大会では総合成績の集計時、同じクラブから複数の競技者が入賞した場合に、最上位者の得点のみを加算するブロッキングシステムが採用された。個人種目、団体種目ともに1位は8点、2位は7点、以下、順位が下がるごとに1点ずつ点数が下がり、8位は1点が得点される。
 また、今年から県内クラブの繋がりをより強化し、ライフセービング活動に対する地元の理解と協力を促進する大会、という位置づけを明確にするため、総合成績は神奈川県内のクラブのみで集計されることとなった。つまり、例えば県外クラブの選手が1位と3位に入賞した場合は、2位の県内選手に7点、4位の県内選手に5点と、歯抜け状にポイントが加算されるということだ。

 この時期、週末に大会が連続して行われていたうえ、前回までとは違う集計システムや、エントリー方法の刷新などが重なり、運営側にも非常に大きな負担がかかっていた。残念ながら総合順位が入れ替わることとなってしまったが、それぞれが全力を尽くして行った結果のこと。お互いを尊重し合い、今後一層みんなで協力してよりよい大会を目指していく契機となれば、ライフセービングイベントがもっと盛り上がっていくことだろう。LSweb

 誰もが一様に熱意をもってライフセービングに取り組んでいる中で、はからずも起こってしまったが、改善の余地があるということは、発展の余地も大いにあるということだ。特に地域と密接に関わる地方大会や地域イベントはライフセービング界にとって非常に重要である。
 同時開催されたジュニア競技会には106人の小中学生が参加した。あとに続くジュニア世代のためにも、今後の取り組みに注視し、こうした大会が末永く成長、継続していくよう願ってやまない。



第15回 神奈川県ライフセービング選手権大会 総合成績

1位:湯河原ライフセービングクラブ 35ポイント
2位:西浜サーフライフセービングクラブ 33ポイント
3位:湘南ひらつかライフセービングクラブ 24ポイント
4位:横浜海の公園ライフセービングクラブ 7ポイント
5位:鎌倉ライフガード 4ポイント
6位:大磯ライフセービングクラブ 3ポイント



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第15回 神奈川県ライフセービング選手権大会 競技会レポート2013/05/28

The 15th Kanagawa Lifesaving Championships
2013.05.26 神奈川県三浦市・三浦海岸

LSweb東京湾を舞台に
シーズン初のサーフ競技会、開催


5月26日、神奈川県三浦市の三浦海岸にて「第15回 神奈川県ライフセービング選手権大会」が開催された。

今年初となる海でのレースは、今週末に行われる、全日本種目別ライフセービング選手権大会に向けた、良い腕試しとなったようだ。




文・写真=LSweb編集室





三浦海岸での開催は10年ぶり


LSweb 「神奈川オープンサーフ」の愛称で親しまれているこの大会は、シーズン最初の海の競技会ということもあって、神奈川県内で活動するライフセーバーを中心に、千葉や東京、静岡など、近県クラブからも多数の参加がある人気の大会だ。

 今年から県内クラブの繋がりをより強化し、ライフセービング活動に対する地元の理解と協力を促進するために、クラブの所在地によって(県内か、県外か)エントリーフィーに差をつけることにしたが、それでも20クラブ(県内9、県外11)、143人が参加。ウインドサーフィンやカイトサーフィンのメッカである三浦海岸を舞台に、レベルの高い戦いが繰り広げられた。

 競技はオーシャンマン/オーシャンウーマン、ボードレース、ビーチフラッグスの個人種目と、団体種目のレスキューチューブレスキューの計4つ。

 オーシャンマンと男子ボードレースは西浜SLSCの長竹康介が貫禄勝ち。2位は、日本初上陸となる豪州ブラボー・ブランドのボードでレースに臨んだ、湯河原LSCの西山 俊と、常連組が顔を揃えた。
 オーシャンマン3位は、勝浦LSCの亀ノ上僚仁、ボードレース3位は同じく勝浦LSCの和田健人が入った。
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 女子は大学3年生、湯河原LSCの竹内梨夏がオーシャンウーマンとボードレースで二冠を達成。オーシャンウーマン2位は、精力的にパドルの練習をこなす和田浦LSCの久保美沙代、3位は横浜海の公園LSCの藤井香織ががんばった。
 女子ボードレースは湘南ひらつかLSCの小林愛菜が2位、湯河原LSCの植松知奈津が3位という順位だった。
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 男女ともに接戦が繰り広げられたビーチフラッグスだが、男子は種目別二連覇を狙う式根島LSCの和田賢一が、ここ一番で集中力を発揮し優勝。白浜LSCの石井雄大、湘南ひらつかLSCの石橋拓土が2位と3位という結果だった。

 2006年世界大会の銀メダリスト、西浜SLSCの北矢宗志は、久しぶりのレース復帰で4位。学生&全日本チャンピオン、勝浦LSCの竹澤康輝はマークが厳しく5位に終わったが、上位陣は種目別に向け、最後の調整ができたよう。今週末の大会が楽しみだ。
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 女子は学生チャンピオンの勝浦LSC、但野安菜が順調に勝ち上がり、最後のフラッグを手にした。湘南ひらつかLSCの嶋谷まい、鴨川LSCの宮崎早穂がそれぞれ2位と3位。ビーチフラッグスの女王、遊佐雅美は種目別に出場しないとのことなので、今度の種目別では若手に大きなチャンスが巡ってくることになる。

 最終競技のレスキューチューブレスキューでは、手に汗握る逆転劇が見られた。溺者役である第一泳者のトップは西浜SLSC、2位は和田浦LSC。
 しかしそこから銚子LSC、湘南ひらつかLSC、勝浦LSCが猛然と追い上げ、最後はドラック勝負に。

 まずゴールしたのは銚子LSC、続いて僅差で湘南ひらつかLSCが2位となり、3位は勝浦LSC、以下、和田浦LSC、西浜SLSC、九十九里LSC、湯河原LSC、神津島LSCという順番だった。
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 ウインドサーフィンのメッカらしく、午後から風が上がった三浦海岸での神奈川オープンサーフ開催は第5回大会以来、10年ぶり。広いビーチエリアと風が吹いてもそれほど波の立たない、シーズン最初の大会にはもってこいのコンディションの中、終始、和やかな雰囲気で競技が行われた。

 LSwebただし、終盤はタイムスケジュールがおせおせとなり、表彰式及び閉会式が行われることなく解散となったのはとても残念だった。
 この大会に備えて準備をし、それぞれ目標を持って真剣な思いで参加している選手たち、頑張った者への優秀な成績を称えてあげるのが表彰式の場だ。「メダル取りに来てくださ〜い」ではあまりにも味気なく、嬉しさも半減だろう。

 また、この記事掲載時(28日/火)において正式な総合成績の順位が未だ発表されていないのも気にかかる。“終わりよければすべてよし”という言葉があるように、参加選手はもちろん、オフィシャルや安全係として大会運営に携わったスタッフの労力が無駄にならないよう、主催者サイドは最後までぬかりなく運営する必要がある。運営に関しては今後に課題が残る大会となった。



☆第15回 神奈川県ライフセービング選手権大会 成績表(5.28)


 


なお、同時開催された「第1回 神奈川県ジュニアライフセービング競技会」の模様は、追ってレポートするのでどうぞお楽しみに。




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第26回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会
競技会レポート 総集編
2013/05/25

The 26th Japan National Pool Lifesaving Championships Report - Roundup -

日体大LSC、王座奪還!
早大LSCが史上初の準優勝


 LSweb第26回目全日本LSプール競技選手権大会は、日本体育大学LSCが王座に返り咲き幕を閉じた。
 
1年ぶりに理事長杯を贈られた宮崎翔平日体大LSC主将は、
「プールインカレで悔しい思いをしたので、とにかく基本を見直し、失格をゼロにするという目標かかげて練習しました。まだ完璧ではありませんが、成果は出たと思います」
と笑顔を見せ、本城里華副主将は、
「今年は“団結”をキーワードに、競技に出る選手も、応援する部員も一生懸命がんばりました。夏に向けて、そしてインカレに向けてますますがんばります!」と次なる目標を掲げた。

若手の活躍、ベテラン勢の踏ん張りを、記録とともに見ていこう。

2013.5-18-19 神奈川県・横浜国際プール

文・写真=LSweb編集室






ニューカマー、躍進

 LSweb今年の全日本プール競技選手権では、女子100mマネキントウ・ウィズフィン、女子4×25mマネキンリレーの2種目で日本記録が、男子ラインスロー、男女200mスーパーライフセーバー、女子4×50m障害物リレーの4種目で大会記録が更新された。
 
 記録更新ラッシュ(日本新:8種目、大会新:5種目)に沸いた昨年と比べると、タイム的には平凡なレースが多かったが、高校生や大学1、2年生といった、将来が楽しみなニューカマーの台頭を目にすることができた大会でもあった。

 昨年、クラブ創立25周年を迎えた早稲田大学LSCは、今大会で総合2位と過去最高の成績を残した。
 早大2年の高柴瑠衣は、女子200m障害物スイム(2位)と女子100mマネキントウ・ウィズフィン(3位)で、また同じく2年生の大山玲奈は、女子200mスーパーライフセーバー(2位)で表彰台に。男子200m障害物スイムでは、2年生の江藤亜門が2位となった。もちろんリレーメンバーとしても活躍。1年先輩の竹内芽衣や、男子の市川智貴らと共に得点を稼いだ。

 高校時代から日本代表として活躍し、今年4月、日本体育大学に入学した坂本佳凪子は、女子100mマネキントウ・ウィズフィンで日本記録を更新。一方、同大学2年となった兄の坂本 陸も、得意の男子200mスーパーライフセーバーで大会記録を更新した。

 拓殖大学1年の大澤凌太は、男子200m障害物スイムで3位入賞。「幸先の良いデビューが飾れました」と嬉しそう。「大学在学中に、中本先輩を超えるメダルを獲りたいです」と、隣にいた中本直也を驚かせる意気の良さを見せた。LSweb

 そのほかにも、日本女子体育大学2年の相馬紗織と髙橋頼子、日本大学1年の速水 愛、同じく日大2年の鯨井洸紀と宇治川仁人、東海大学湘南校舎2年の中島静香そして古泉俊二郎、大阪体育大学2年の黒木健太、同じく大体大1年の小林 海、法政大学2年の合津翔太、国際武道大学2年の寺本 陸などが個人種目で入賞しており、今後の活躍に期待が持てる。

 ニューカマーは大学生だけではない。高校生の参加が大幅に増えたのも、今大会の特徴の一つだ。個人種目に参加した高校生は、男女合わせて2日間でのべ57人。
 ジュニア時代から地域クラブで活動してきた選手も増えてきた。そういった選手は、高校生といえどもライフセービング歴は4〜5年、あるいはもっと長く、立派な戦力として団体種目にも出場していたりするわけだ。LSweb
 
 その代表例が、女子100mマネキンキャリー・ウィズフィンで2位、女子100mマネキントウ・ウィズフィンで6位に入賞した髙橋愛海や、女子100レスキューメドレーで5位となった上野真凜の西浜SLSCメンバーだろう。

 一方、昭和第一学園高校や成城学園のように、学校の部活動としてライフセービングに出会うパターンもある。昭和第一高は学校にプール設備がないが、そんなハンディを感じさせない奮闘ぶりを見せてくれた。中でも茶本三春、小形梨沙ペアが、女子ラインスロー2位と素晴らしい成績を残したのが印象的だった。

 そのラインスローでレスキュアーとして男女ともに優勝したのは、昨年11月にユース日本代表として世界大会を経験した、成城学園大学2年の利根川莉奈と、大体大1年の小林 海だった。
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 高校生でもうひとり入賞したのが、女子200m障害物スイム8位の名須川茉莉乃(茅ヶ崎SLSC)だ。九十九里LSCの名須川開渡、茅ヶ崎SLSCの名須川紗綾の妹である。「日本代表に選ばれた姉の姿が格好良くて」ライフセービングをはじめたという名須川4兄妹の末っ子。兄、姉は今大会でいずれもメダルを獲得している。今後も2人に追いつけ、追い越せの意気込みで頑張ってほしい。

 もちろん、今大会で活躍したのは若手ばかりではない。幹部としてクラブを引っ張る大学3、4年生、新生活を始めたばかりの社会人1年生、そして仕事と両立させるベテラン社会人たちは、それぞれがベストを尽くして、きっちりと結果を出していた。

 4月から社会人として働き出した銚子LSCの栗真千里は、女子200m障害物スイムで自己ベストを更新して優勝。日大の4年生となった三井結里花も、得意の女子200mスーパーライフセーバーで大会記録を更新する泳ぎを見せた。
 
 30代女子として圧倒的な強さを発揮したのは、館山SLSCの毛利 邦だ。女子50mマネキンキャリー、女子100レスキューメドレーの2種目で優勝。多忙な社会人でも、本人の努力次第で仕事と両立できることを証明してくれた。

 男子200m障害物スイムでは、東京消防庁LSCの平野修也が優勝した。水難救助隊としての任務につきなら、競泳の日本選手権にも出場する平野の得意種目は50m自由形。「だから、最初のターンでもう疲れてしまって」といいつつ、2位以下を2秒引き離しての勝利だった。

 30代後半、ベテラン男子の意地を見せてくれたのが、男子100mマネキントウ・ウィズフィンと男子200mスーパーライフセーバーの2種目で入賞した御宿LSCの林 昌広と、男子50mマネキンキャリーで入賞した銚子LSCの田村憲章だろう。
 その背中を見ているのが、男子100mマネキントウ・ウィズフィン2位の長竹康介(西浜SLSC)や、男子100mレスキューメドレー入賞の落合慶二(東京消防庁LSC)ら、中堅ライフセーバー。
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 そして、そんな挑戦し続ける30代の背中を追いかけているのが、社会人生活が始まったばかりの西山 俊(湯河原LSC)や菊地 光(九十九里LSC)、小出大祐(東京消防庁LSC)、益子進一(九十九里LSC)、葺本康隆(波崎SLSC)、古金源太(銚子LSC)たちだ。

 高校生、大学生、そして社会人まで、年代を超えて0.1秒を競うことができるのが、プール競技選手権の醍醐味である。

=敬称略


同時開催されたCPR講習会

 LSwebプール競技選手権が行われていた横浜国際プールでは、競技日程と平行してCPR資格認定講習会が開催されていた。
 
 競技会のために施設を貸し切るのであれば、一般市民向けにCPR講習会を開催することも可能なのではないか、というアイディアで行われたこの講習会には、大学1年生を中心に19人が参加。競技に負けず劣らず、非常に熱心に講義、実技に励む受講生の姿があった。

 受講生の一人、国士舘大学2年生の鈴木悠花さんは、
「今年の2月からクラブに加入しました。元々、水泳をやっていてライフセービングに興味を持っていたのがきっかけです。夏のパトロールに向けて今日はCPR、来週はウォーターセーフティー、6月にベーシックと資格取得に大忙しですが、ライフセービングは楽しいです!」
 と元気いっぱい。以前持っていた資格を失効してしまったので、と参加した高崎千鶴さんは、
「分かってはいたことですが、CPRをやり続けるのは重労働だと、改めて感じました。JLAの講習会に参加すれば、資格として認定してもらえますから、一般に人にもオススメですよね。それに講習の後に競技も少し見られたので、楽しかったです」
 と言いながら、顔見知りのライフセーバーと談笑を楽しんでいた。

 今回の試みは、講習会を受講してもらい、ライフセービング活動の一つである大会にも興味を持ってもらうには一石二鳥の企画だったと思う。
 
 惜しむべきは、もう少し広く一般に告知されていれば、普段からこのプールを利用者している人たちなどが参加してくれたのではないか、ということだ。
 心肺蘇生法やAEDの使い方を知りたいというニーズは、一般の人たちの間で年々高まっている。こうした機会をもっと増やしていけば、ライフセービングのすそ野はさらに広がるはずだ。



第26回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会 成績表



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第26回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会
競技会レポート SERC編
2013/05/24

The 26th Japan National Pool Lifesaving Championships Report - SERC -

レスキュー技術を競うSERC
優勝は大学3、4年生で挑んだ大竹SLSC

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26回目を迎えた全日本LSプール競技選手権大会が、5月18〜19日の2日間、神奈川県の横浜国際プールで開催された。今大会には48クラブ、623人がエントリーし、各競技で熱い戦いが繰り広げられた。
 
室内プールで行われる白熱した戦いと応援合戦に、全日本の会場は熱気ムンムンとなるのだが、一つだけ会場が静まりかえる競技がある。架空の水難事故現場で救助力を評価されるSERCだ。唯一の採点競技であるSERCについて、振り返ってみよう。

2013.5-18-19 神奈川県・横浜国際プール

文・写真=LSweb編集室





SERC採点のポイント


 LSweb最もライフセービングらしい競技と言われる、SERC(シュミレーテッド・エマジェンシー・レスポンス競技)だが、0.01秒まで明確に表示され、順位が決定するほかの種目に比べ、勝敗のポイントが分かりにくい。それは、審査員が救助力のレベルを判断する採点競技だからだ。

 体操やフィギュアスケートなども採点競技で、例えば屈伸宙返りなら1点、伸身宙返りなら2点、あるいはトリプルサルコウなら2点、トリプルルッツなら3点という基準がある。
 SERCも基本的にはほかの採点競技同様、基準となる採点ルールが存在している。その大原則が、レスキューの基本である「安全・確実・迅速」であり、溺者や傷病者のレスキュー優先順位は、以下ように発表されている。

① 泳力の弱い人、自力で移動できる人
② 危険の迫った人(泳げない人、ケガをした泳者)
③ 継続的なケアが必要な人(意識がない人、呼吸がない人、頸椎の損傷が疑わしい人)
 
 
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資料1

ただし、体操やフィギュアスケートと違うのは、SERCには減点システムがないということだ。体操なら着地に失敗したら、フィギュアスケートなら転倒すれば減点される(もっと細かい減点基準もあるはずだ)。しかしSERCの場合は、例え優先順位の低い人に最初にアプローチしたとしても、減点されることはない。
 ではジャッジはどこを見て採点しているのだろうか。今大会の事故状況を例にとり見ていこう。

 今回は、神奈川県内にある水深1.2mのプールで、複数の事故が発生したという設定で行われた。競技者は1チーム4人、競技時間は90秒。状況設定(資料1参照)は、前日の代表者会議で各クラブに伝達されているが、どんな事故が起こっているかは競技がスタートするまで分からない。
 競技当日、競技者が隔離(ロックアップ)された後、事故を含む状況詳細が公表され、競技がスタートする。

 今大会で設定された事故の状況は資料2のとおり(資料2参照)。なお競技者はプールの三方向からアプローチが可能であり、監視タワーには救助用具(バックボード、AED、FAセット、リングブイ、携帯電話)がそろっている。

 ジャッジがまず採点するのは、要救助者役(今回の場合はA〜H)
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資料2

にアプローチしたか、しなかったか。また、どういうタイミングでアプローチしたか。アプローチ方法は適切だったか。そして、その後の対処は適切だったか。
 
 さらに、救助方法が適切、迅速であれば追加点が与えられる。例えば、優先順位が高い要救助者役に、競技開始後すぐにアプローチしていれば追加点が与えられる。あるいは、軽溺者にアプローチするときに道具を使えば加点される、といった具合だ。
 
 ところが、救助が早くても軽溺者に素手でアプローチした場合は、追加点がもらえないこともある。なぜなら、「ライフセーバーの個人的安全が常に最優先される」と競技規則にも書かれているからだ。

 SERCが採点競技である以上、その判定にはルールが必要だ。実際には道具を使わずに救助できたとしてもである。今回の状況設定は、水深1.2mのプールだった。大人ならば、楽に背の立つ深さである。事故など起こりそうにないと思うかもしれないが、実は大会の1週間前、神奈川県内のプールでアルバイトの監視員が溺れて亡くなる事故が起こっている。そのプールの水深は1.2mだった。

「状況設定を考えていた当初は、水深1.3mを想定していました。しかし実際の事故のニュースを聞き、1.2mに変更したのです。水難事故だけに限りませんが、事故というのは思わぬ状況で起こるものです。ライフセーバーにとって、プールという設定は馴染みが薄かったかもしれませんが、救助の基本は海でもプールでも変わりません。どんな状況でもそれを忘れずにいてほしいと思います。もちろん、採点の基準も海とプールで変わりません」(内田直人SERCワーキンググループリーダー)

「素早く救助するというのは大事なポイントです。でも早ければいい、というわけではなく、溺者がマネキンだからといって、粗雑に扱うようでは追加点は入らないでしょう。反対に、例えば重溺者を引き上げたときに、水没している場合はまず吹き込みをしてからCPRに移行すれば、加点につながります。高得点を得るためには、基本はしっかりおさえつつ、ハイレベルな救助技術を披露する必要があるでしょうね」(泉田昌美SERCジャッジ)

 競技終了後、ジャッジのポイントについて答える内田リーダーの映像があるので、参考にしてほしい。


☆競技終了後のSERC総評




大竹SLSCがSERC優勝


 要救助者に声かけをしながら、いかに情報を得るかというのも、追加点を得る大事なポイントだ。

LSweb 今回、チームによって大きな差があったのが要救助者:A2への声かけだった。トイレから戻ったら子どもがいなくなっていた、という設定のA2。しかし「子どもがいません」とは言わず、ただプールサイドをウロウロしているだけ。
 
 ここで「事故が発生しました。座ってください」と声をかけると、A2は素直に座ってしまい情報は得られない(実際にはそんな母親はいないはずなので、改善の余地はあると思うが……)。しかし「どうしました?」と声をかけると、「子どもがいなくなって」と話してくれる。すると、子どもがどこかで溺れているのではないか? というヒントに結びつくわけだ。

 90秒という競技時間の中で、いかに迅速に問題を解決するか。あえていうなら、SERCは一種のロールプレイングゲームのようなものだ。子どもがいない→どこかで溺れているかもしれない→子どもなら浮き輪で遊んでいたかも→浮き輪はあるけど子どもがいない→じゃあ浮き輪の周辺を探してみよう、となればA1の早期発見に結びつく可能性が高まると思うのだがいかがだろう。

 ライフセービング活動に最も近い競技といわれるSERC。だからこそ、救助者は「しっかりやらなきゃ!」と緊張し、プレッシャーもかかるのだろう。でも、これは競技だと割り切れば、もっと柔軟で臨機応変な対処ができるのではないだろうか。
 
LSweb 今回、並み居る強豪を抑えて優勝した大竹SLSCの得点は183ポイントだったが、実は今回の状況設定では、最高で294点まで加点することが可能だった。「安全・確実」という普段通りのルールを守り、さらに迅速に、さらに加点をもらえるようにするには、まじめ一辺倒ではなく、頭を少し柔らかくする必要があるのかもしれない。ひいてはそれが、さまざまな状況を想定しなければならない、実際のパトロールにも役立つことになるはずだ。

 順位は24位だったが、事故現場というシミュレーションをよく分析し、競技に臨んでいたと感じたのが、草柳尚志、久保美沙代、そして2人の高校生、森野友也と永石哲朗で挑んだ和田浦LSCだ。
 
 LSweb競技開始とともに、草柳が「事故が起きました。皆さん、まずコースロープにつかまってください」と落ち着いた良く通る声で呼びかけ、それから救助に取りかかった。
 プールならばコースロープが張られているだろう→つかまれる人、つかまれない人で状況を把握することができる→それぞれに応じた救助をする、そんな合理性とストーリー性が見えるSERCだった。

 優勝した大竹SLSCはSERC上位入賞の常連チームで、2006年にはこの種目で優勝も経験している。今年チームを組んだのは筑波大学3、4年生の鶴薗宏海、赤田樹皇、森 大輝、浅岡紘季の4人だ。

「代表者会議で状況設定が伝達されたときにまず思ったのが、アクセスできる場所が多いプールなので、泳力に頼らなくてもいいから、競技の難易度はそれほど高くならないだろう、ということです。要救助者をすべてピックアップするチームも多いかもしれないと思いました。それならばなおさら、一つ一つを丁寧に、確実に、そして安全に、そこをきちんとやろうと話し合いました」
 と言う鶴薗だが、競技終了後は反省点が山積だったと、こう続けた。

 「競技が終わった時には、自分のせいで負けたと思いました。水没しているマネキンがいるのを分かっていながら、ほかの人への対処に手間取って、具体的には『携帯で119判通報してください』とまで指示してしまったため、マネキンをあげる時間がなくなってしまったのです」
 森もしきりに反省する。
「子どもが迷子になっている人から情報を引き出すような声かけができなかったこと、FAボックスを監視タワーの反対側まで持っていってしまい、本当に必要な人の手当てができなかったことが、悔やまれます」
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 「FAボックスを持っていかれたことで焦ってしまい、本当はもっと水の中でも手伝うことができたのではないかと落ち込みました」
 と言うのは赤田だ。
「反省点はもちろんあります。でも、事前に練習していたことは確実にできたと思います」
 と最後にきっぱりと答えてくれた浅岡は、
「実は昨晩も、2006年の優勝メンバーで、海外赴任している先輩にスカイプで電話し、アドバイスをもらったんです」
 と笑顔を見せた。
 基本に忠実に、そして丁寧にレスキューを行った大竹SLSCの4人。ジャッジはそこを高く評価したのだ。

 2位は長竹康介、荒井洋佑、荒井 閑、篠 郁蘭がチームを組んだ西浜SLSCだった。長竹、荒井洋佑、篠は現役の消防士。救命救急の現場で働くプロとして、また昨年優勝の実績もあり、安定感あるレスキューを見せてくれた。
 蛇足だが、荒井洋佑、荒井 閑(旧姓:勝俣)は結婚式を挙げたばかり。夫婦共演は四半世紀を超える全日本の歴史の中でも、初めてに違いない。結婚とSERCの優秀なる成績に、おめでとう!
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 3位は早稲田大学LSCが入った。このSERCのポイントが、総合2位の躍進に繋がったのは間違いないだろう。
 以下、東京消防庁LSC、愛知LSC、玉川大学LSC、銚子LSC、大阪体育大学LSCと続いた。

 残念だったのは、ロックアップの集合時間に間に合わず、6チームが失格、1チームが棄権となったことだ。SERCに参加しなければ、総合順位もつかない。これもまた、全日本LSプール競技選手権のルールである。

=敬称略


☆SERC成績
1位:大竹SLSC 183ポイント
2位:西浜SLSC 180ポイント
3位:早稲田大学LSC 172ポイント
4位:東京消防庁LSC 167ポイント
5位:愛知LSC 166ポイント
5位:玉川大学LSC 166ポイント
5位:銚子LSC 166ポイント
8位:大阪体育大学LSC 161ポイント








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