Competitions

第27回全日本学生ライフセービング選手権大会
競技会レポートその1
2012/09/24

2012.9.22-23 千葉県・御宿中央海岸

関東、関西、中国地方から、雨の御宿に39校が集合


千葉県御宿海岸に戻ってきた学生選手権。
前日までの残暑が嘘のように涼しく、
大会2日目は雨天で肌寒いくらいの陽気となったが、
それでもやっぱりインカレは熱かった。

文・写真=LSweb編集室





リベンジか? 連覇か? 注目の男子ビーチフラックス

LSweb 39校が参加した今年のインカレ。残念ながら昨年よりエントリー数が7校減ったが、中国地方から広島国際大学が初参加するなど、ライフセービングの裾野が広がり続けていることを示す、確かなシグナルもあった。今回、御宿へ足を運んだ同校のメンバーは男女各2人の4人。代表を務める3回生の茶山典子は、
「とにかく他大学のパワーに圧倒されました。そして自分たちももっと頑張らなければと思いました。初めてインカレに参加して、たくさんの学生ライフセーバーたちと知り合いになることができたのが、大きな収穫だと思います」
 と初出場の感想を話してくれた。熱い思いを胸に、広島への長い帰路についた彼女たち。来年の再開が楽しみである。

 大会初日に行われた決勝種目は2種目。まずは個人種目のサーフスキーレースが行われた。女子は6月の種目別選手権で勝った名須川沙綾(文教大学)が、安定した力を発揮しインカレも制覇。2位は三井結里花(日本大学)、3位には大塚彩加(東海大学湘南校舎)が入った。一方、男子は先頭集団の1艇が沈。それをうまくよけた髙橋宗沖(東海大学清水校舎)が優勝を手にした。2位は加藤 凌(早稲田大学)、3位は菊地智輝(国際武道大学)と続いた。
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 サーフスキーは経験と練習がものをいう競技だ。スタート時の混戦から抜け出すパワーとテクニックは勝敗を大きく左右するし、また、波のあるコンディションでは艇をしっかりコントロールする力、フラットなコンディションでは細かいうねりをとらえジリジリと前へ出る技なども必要となる。相対的に社会人が強い種目であるが、今回、上位に名前を連ねた選手たちは全日本でも入賞が狙えるはず。あと2週間、集中力を継続させてほしい。

 2種目目は団体種目のオーシャンウーマンリレー、オーシャンマンリレーが行われた。オーシャンウーマンリレーを制したのは日本体育大学。2位は東海大学湘南校舎、3位は日本大学。オーシャンマンリレーは、国際武道大学が1位、法政大学が2位と大健闘、東海大学湘南校舎が3位という順位だった。

 2日目は朝から断続的に雨の降るコンディション。硬くしまったビーチが勝敗にどう影響するだろうか。注目のビーチ種目は、団体競技のビーチリレーから始まった。
 この種目、予想通り激戦が繰り広げられたが、優勝は男女ともに日本体育大学。女子は東京女子体育大学、国際武道大学が続いた。男子は着順2位だった国際武道大学が、バトンの受け渡しミスにより失格。その結果、法政大学が2位、神奈川大学が3位に繰り上がった。連覇を狙う国際武道大学にとって、この失格は痛かった。
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 これで奮起したというわけではないだろうが、続くビーチフラッグスでは国際武道大学が強さを発揮した。女子は優勝経験のある選手たちが卒業し、1〜2年生中心のニューフェイスでの戦いとなったが、その中で頭一つ抜けていたのが但野安菜(国際武道大学)だ。最後までスピードが落ちることなく優勝。2位は川崎汐美(日本女子体育大学)、3位は藤野智秋(東京女子体育大学)ががんばった。
 
 男子ビーチフラッグスの優勝決定戦は昨年のインカレと同じ顔合わせとなった。昨年、地元・愛知で1位となった岡田浩平(中京大学)と、今年、地元・千葉でリベンジしたい竹澤康輝(国際武道大学)だ。両者の戦いは、ここ一番で会心のスタートを見せた竹澤の勝利。3位と健闘したのが神奈川大学の坂田 郷だった。

 「ビーチ系が強いのがうちの学校の伝統です。ビーチフラッグスは強い先輩や同期たち3〜4人で練習しています。勝ち残った者として、皆の分もがんばろうと思っていました。岡田くんには昨年負けているので、勝てて嬉しいです」
 という竹澤は、レース直後にもかかわらず意外に落ち着いた様子。普段通りの力を発揮することができたのだろう。

 一方、岡田はもう一つ連覇のかかるビーチスプリントでも2位に終わった。優勝したのは、昨年3位の岩井大地(東海大学湘南校舎)。3位は石井雄大(日本体育大学)。
「硬いビーチが苦手というわけではないですが……」
 と首をかしげる岡田。
「どんなコンディションでも戦えるようにならないとダメですね」
 と更なる精進を誓った。岡田も竹澤も大学3年生。2人の名勝負は来年もまた見られるかもしれない。
 
 女子ビーチスプリントは日本体育大学の2人、山田未来と渡邊来美が1位と3位に入った。2位は昨年7位から順位を上げた犬島未歩(東京女子体育大学)だった。
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 (「インカレ競技会レポートその2」へつづく・・・)




坂本ママの
三洋物産インターナショナルLSカップ2012 観戦記
2012/09/21

2012.09.16-17 愛知県・内海海岸 千鳥ヶ浜海水浴場

SANYO BUSSAN International Lifesaving Cup 2012


日本国内で定期的に開催される唯一の国際大会、
三洋物産インターナショナル ライフセービングカップ 2012が、
愛知県の知多半島に位置する内海海岸で開催された。

6回目を迎えた今大会には、
オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカの各国代表と、
日本代表、ユース日本代表の7チームが参加。
台風16号の影響で波が高まる中、見応えのある熱戦が繰り広げられた。

この大会を特別な思いで観戦していたのが、
2人の子どもが代表入りした坂本 靖・千佳子夫妻だ。
兄の坂本 陸選手は大学1年生でユース日本代表メンバーに、
妹の坂本佳凪子選手は、高校3年生ながら日本代表メンバーに選ばれた。
そんな2人の活躍を、ハラハラ、ドキドキしながら見守った千佳子さんに、
観戦レポートをお願いした。さて、母の気持ちやいかに!?(LSweb編集室)

文・写真=坂本千佳子





見慣れない競技に出る姿にドキドキ

 三洋物産カップを憧れの眼差しで初めて観戦したのは2006年、息子・陸が中学1年生、娘・佳凪子が小学6年生の頃でした。その2人が今年、揃って日本代表、ユース日本代表として、この大会に出られるようになるとは夢のようです。
 
 ワクワクした気持ちで愛知県の内海海岸へ。内海海岸は、昨年の全日本学生ライフセービング選手権大会(インカレ)に、オフィシャルとして参加させていただいた時にもお邪魔した美しい海岸です。
 
 国内の大会とは一味違う開会式の後、ランスイムランから競技開始です。外国人選手と一緒にスタートラインに並ぶ我が子の姿は、やはりちょっと格好いいですね。
 
 1日目はこのほか、チーム種目が3種目行われました。各チーム男女それぞれ6人の選手で構成されるため、陸は普段は出場することのないビーチリレーも走ります。足をひっぱってしまうのでは……と思うドキドキと、珍しいのでよく見ておかなくては!という気持ちが半々。複雑な心境でした。
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 1日目の競技が無事終わり、会場から車で5分程の旅館にチェックイン。温泉とおいしい食事を堪能させていただきました。友人、知人たちからは「旅のメインはそっちでは?」と言われてしまうことも多いですが、やはり行ったからには楽しまないといけませんよね。
 
 今回は大会前日から愛知県に向かい、少し足を延ばして岐阜国体の水泳競技も観戦してきました。陸が卒業、そして佳凪子がお世話になっている高校の水泳部の仲間たちが多数、国体に出場していたため、応援に行ったのです。
 なんとそこで200m平泳ぎの世界新記録の誕生の瞬間を目撃してしまいました! ライフセービング大会の応援と言いつつ、いろいろな場所でたくさんのことを楽しませてもらっているのですから、子どもたちには感謝しなくてはなりませんね。

やっぱり世界の壁は高かった

 2日目。前日に引き続き急に激しい雨が降ったり、また焼けるように熱い日差しになったりと天候が安定しない中、次々と競技が行われました。

 その中でとても嬉しかったのは、小学生の頃からうちの子どもたちと一緒に西浜SLSCで活動している小林 海くんが、ボードレースで3位になったことです。海くんは陸と同級生。ユース日本代表のチームメイトでもあります。そして総合結果で、日本代表が2位に! これもまた素晴らしいことで、とても嬉しかったです。
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 我が子2人はというと、2日間、いろいろな競技に出場させていただきましたが、分かってはいたものの世界(特にオーストラリア)との実力の差の大きさを痛感させられました。この今ある差をどれだけ縮められるか、またそのためには何をするべきなのかをしっかり見つめ直し、世界大会へ、そしてその先に向かっていってほしいと思います。
 また今回は、佳凪子が体調の管理に失敗したようなので、そういったことも次回への教訓となることと思います。
 
 若くして、このような素晴らしい経験をさせていただけるチャンスに恵まれたことに感謝をしています。子どもたちにも感謝の気持ちを忘れずに全力で頑張ることで、サポートや応援をしてくださった方々に恩返しをしてもらいたいと思います。
 坂本 陸、佳凪子選手は、今年11月に豪州アデレードで行われる世界大会「Rescue2012」に日本代表、ユース日本代表として出場することが決まっている。大会まであと2カ月。兄妹で切磋琢磨しながら、さらなる高みを目指して欲しい。




第9回ジュニア・ライフセービング競技会 with 第4回JLAクラシック2012/09/04

2012.09.02 神奈川県・腰越海岸

キッズ197人が腰越海岸に集合
楽しくて、ちょっぴり悔しい、競技会!?



9月最初の日曜日、
南は沖縄から北は岩手まで全国各地の小学生197人が参加した、
第9回ジュニア・ライフセービング競技会が開催された。
スタートラインに並ぶ子どもたちの表情は一様に不安そうだったが、
ゴールに飛び込む時の顔は誰もが誇らしげ。
その姿に保護者はもちろん関係者一同が胸を熱くした大会だった。
同時開催された第4回JLAクラシックでは、
35歳以上のベテランライフセーバーが必至の形相でがんばった。
子どもも大人も満喫した大会の様子を紹介しよう。

文・写真=LSweb編集室




ニッパーボード、波に乗るって、楽しいな

 海水浴場が営業を終えた直後の9月2日、9回目を迎えたジュニア・ライフセービング競技会が鎌倉市の腰越海岸で開催された。今年から対象者を小学1〜6年生に限定。それでも200人近い子どもたちがエントリーした。
 
 9月の始まりが週末だったことから、今年は夏休みが2日多かったというラッキーな小学生もいたのではないだろうか。そんな子どもたちにとって、この大会は夏休み最後のイベント。すでに学校が始まっている子どもたちにとっても、ワクワク、ドキドキ、心待ちにしていた大会に違いない。
 ところが、大会当日の朝は傘が役に立たないほどの激しい雨。雨音で目を覚ました保護者も多かったことと思う。幸い、天候は不安定ながら雷が鳴るようなことはなく、ビーチ競技、オーシャン競技共に予定されていた全レースが消化された。
 
 サーフエリアで最初に行われたのは、男女混合小学3、4年生クラスのニッパーボードレース。続いて男女別々で小学5、6年生クラスのニッパーボードレースが行われた。
 子どもたちはニッパーボードで遊ぶのが大好きだ。水辺の事故防止を目的に、夏休み期間中に各地で開かれたジュニア・ライフセービング教室でも、子どもたちに大人気なのがニッパーボードを取り入れたメニューだった。波に乗る感覚はほかの遊びでは味わえない。だからレースでも皆、楽しそうにニッパーボードに乗っていた。
 
 しかし、やはり速いのは、定期的にニッパーボードで練習をしているライフセービングクラブ所属のジュニアたちだ。5、6年生クラスでは表彰台に上がった全員がライフセービングクラブのジュニアたちだった。3、4年生クラスの決勝では、最後の波で4〜5人が横一線に並ぶ場面があったが、西浜SLSCジュニアの志賀海征選手が上手く波をつかみ優勝。ゴール後、「最後に波が押してくれたんだ」と笑顔を見せた。
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あと少し、ブイを数えて、ランスイムラン

 ジュニア競技会は一般にも広く門戸を開放している。今大会にはスイミングスクールやスポーツクラブ、野外活動グループ、そしてライフセービング教室に参加して興味を持ったという普通の小学生たちもたくさん参加していた。
 得意のスイムを生かし、ランスイムランの男子5、6年生クラスでワンツーゴールしたのが、世田谷スイミングアカデミーの深沢大和選手と板場貴大選手。女子5、6年生クラスではチームうみがめの桑原菜緒選手が3位に入った。
 
 海で実力を発揮する子どもがいる反面、足が立たない場所では思うように泳げなくなってしまう子どももいた。特に予選では沖のブイまではたどり着いても、そこから先に進めなくなってしまう子どもの姿が散見された。ブイにつかまり必死な顔の小学生。なんとかゴールさせたいと、安全係のライフセーバーがフォローする。

 「本当に危ない時以外は、やめる、やめないの判断は子ども自身にさせるようにしています。なんとか泳ぎ切って自信をつけてもらいたいので、あそこのブイまで行こう、よし次のブイまで行こうという具合に励ましながら少しずつ進むのです」
 と話すのは、レスキューボードで伴走していた西浜SLSCの風間隆宏さんだ。クラゲに刺されて怖くなり、完泳できない子どももいたが、スイムブイを回りきることができれば、水深が徐々に浅くなるのでもう大丈夫。声援に後押しされ、最後のランを走りきった子どもたちの顔は、順位に関係なく皆、達成感で輝いていた。
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悔しいな、ビーチフラッグス、負けちゃった

 小学1、2年生から参加できるビーチフラッグスは、参加者が最も多い種目だ。この競技は瞬発力だけでなく持久力も必要になる。そこで、スタートラインからフラッグまでは15mと、通常より5m短い距離に設定。スタートの合図はこの競技の第一人者、日本代表の植木将人さん(西浜SLSC)が行った。

 「ヘッズダウン」の声で、一斉に重ねた手の甲に顎をつける子どもたち。目は真剣そのもの。そして笛の合図で振り向く時には、大人顔負けの俊敏性を見せてくれた。しかし、今の子どもたちはその後がおとなしい。競争する機会が少ないためか、1本のフラッグを掴んだまま顔を見合わせているというシーンが何度もあり、その度に再レースが行われた。
 ところが面白いもので、再レースになると子どもたちの顔つきが変わってくるのだ。眠っていた闘争心に火が付くのだろうか? 目つきが厳しくなり、唇をギュッと噛みしめる子もいた。勝てば嬉しいし、負ければ悔しい。だからこそ、子どもたちの顔はどんどん真剣になっていくのだ。
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 男子小学5、6年生クラスの決勝レースではこんなことがあった。優勝した下田LSCの笹本裕太選手は、3位決定戦で2回、優勝決定戦で3回、合計5回も再レースを行った。大人でも集中力を意地するのに苦労する状況だが、本人は尻上がりに集中力を高め、最後は会心のスタートでフラッグを手にした。ビーチフラッグスはたったの数秒で決着がつく。その短い時間にもかかわらず、笹本選手は1レースごとに確実に成長していくのが分かった。そして優勝した瞬間、緊張の糸が切れたのか大粒の涙を流し、小学生本来の幼い顔に戻ったのが印象的だった。

 このほか、波打ち際を走るウェーディングレースや、ニッパーボードに乗った子どもを親が押す親子チャレンジなど、表彰のないファンレースも大いに盛り上がった。2日おまけの夏休みで、子どもたちは大きく成長したに違いない。
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筋肉痛、出るのは明後日!? クラシック

 ジュニア競技会と同様、いやそれ以上に盛り上がったのが4回目を数えたJLAクラシックだ。出場資格は35歳以上であること。今回は男子31人、女子10人、合計41人と過去最大の参加者が集まり、サーフスキーレース、ランスイムラン、ビーチフラッグスの個人種目と、レスキューボードリレー、スイムリレーの団体種目で熱戦を繰り広げた。
 
 主催者側から「ケガをしないように気をつけましょう」という注意事項もあり、和気あいあいとした雰囲気で始まった大会だが、腕に覚えのある元日本代表も多く、知らず知らずのうちにレースは白熱。特にリレー種目は抜きつ、抜かれつのデッドヒートで、40代以上の中年(失礼!)組はあえぎながらのゴールとなった。それでも、参加者の顔には満面の笑みが浮かび、実に満足げな表情。体は思うように動かなくても、心は完全に10年前、あるいは20年前にタイムスリップしているようだった。
 
 親はJLAクラシック、子どもはジュニア競技会という親子参加者が増えてきたのも近年の特徴だ。館山SLSCでは今年、ジュニアメンバーの保護者が2人、ベーシックサーフライフセーバー資格を取得した。その一人、斎藤健一郎さんは娘のひなの選手と親子で参加。「子どもたちがメキメキと力をつけてきたので、負けないように資格を取りました。娘と一緒に、できるだけ長くライフセービングを続けていければいいと思っているのですが……」と切ない親心をのぞかせる。
 
 女子ビーチフラッグスで優勝した福島恵里さんは、夫の福島勝一さん、息子の勝太選手と親子3人で参加していた。「子どもがライフセービング教室に参加したことがきっかけで、この大会に出るようになりました。私自身はライフセービングの経験はまったくありませんが楽しいですね」とコメント。ちなみに勝太選手は男女混合3、4年生クラスのビーチフラッグスで2位。足の速さはきっとお母さん譲りなのだろう。

 「全日本に向けての助走になれば」と本気モードだったのは、サーフスキーレースで優勝した、東海大学湘南校舎LSC OB会の大西 明さんだ。「この年になると、練習をやめたらもう元には戻れません。だから継続するしかないんですね。僕の目標は全豪に出続けているグラント・ケニー。彼の背中を見て育ったオージーは多いはずです。自分もそうなれればいいと思っています」と日に焼けた顔をほころばせた。
 
 年々、参加人数が増えるJLAクラシック。100人規模の大会になる日もそう遠くないかもしれない。

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P.S. 「第9回ジュニア・ライフセービング競技会 with 第4回JLAクラシック」の大会写真を、GalleryにUPしました! Galleryカテゴリでは、JLAクラシック編、ジュニア・ライフセービング競技会編に分けてアップしてあります。子どもたちの真剣ではつらつとした表情は、見ているだけで元気を貰えますね。JLAクラシック編では、久しぶりに現役時代を思い出し奮闘した往年のお兄さん、お姉さん!?ライフセーバーの様子をぜひご覧下さい。クラッシックのビーチフラッグス表彰選手のコメント動画も公開中です。どうぞお楽しみ下さい。




第25回全日本ライフセービング・プール競技選手権大会2012/08/24

2010.5.19-20神奈川県・横浜国際プール

館山SLSC、総合優勝!
西浜SLSCがSERC二連覇



25回目を数える全日本プール競技選手権が、横浜国際プールで開催された。
四半世紀を迎えた記念すべき大会には、45チーム、547人が参加。
熱気に包まれた会場では、大会記録、日本記録が続出した。

文・写真=LSweb編集室




日本記録、大会記録が連発!

 個人競技男女各6種目、リレー競技男女各3種目、そしてラインスローとSERCで競われた全日本プール競技選手権では、8個の日本新と7個の大会新が記録された。記録ラッシュの先陣を切ったのは、女子200m障害スイムの坂本佳凪子(西浜SLSC)だ。昨年、国際大会のジャーマンカップで自身が出した日本記録を、2秒あまり縮める2分16秒91でゴール。高校3年生、伸び盛りの坂本がどこまで記録を伸ばすことができるか、今後の活躍も非常に楽しみだ。
 女子でもう一つ日本記録を更新したのが、女子100mマンキントウ・ウィズフィンの水間菜登(勝浦LSC)。昨年の大会で同種目の日本記録を出した水間だが、今大会では自己記録を1秒弱更新し、1分05秒80を記録した。体格的にも恵まれた水間だが、強さの秘訣はそれだけではない。レスキューチューブの扱いがうまく、トランジットを素早くこなせる器用さを持つ。3月に大学を卒業、環境が変わった中でも安定した強さを見せてくれた。

 男子は個人競技で5個の日本新記録が生まれた。まず、男子200m障害スイムで前田健輔(西浜SLSC)が2分02秒86を記録し優勝。4年ぶりに日本記録を更新した。大学時代、競泳部で活躍していた前田。社会人になり以前から興味にあったライフセービングの世界に飛び込んできた。それから3年。「目標は2分を切ることだったんですが……」と言いつつ、日本新記録達成に笑顔を見せた。「昨年10月に行われた全日本では、サーフレースで実力の差を感じました。今年はまずプールで結果が出せたので、海でも良い結果が出せるようにがんばります」と言う前田だ。
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 男子100mマネキンキャリー・ウィズフィンで、52秒55の日本記録をマークしたのが西山 俊(湯河原LSC)である。2年前に日本記録を樹立したこともあり、西山はこの種目を得意とする。さらに、豪州ゴールドコーストでの武者修行から帰ってきたばかりとあって、活躍は当然のことと思われたが、本人曰く「不安でいっぱい」だったのだとか。
「オーストラリアではプールの練習ができず、マネキンもほとんど触っていませんでした。それにオージーは皆、速くて、勝つことができなかったんです。だからなんというか、勝つ感覚を思い出せなくて……。林(昌広)さんのアドバイスで気持ちを切り替えることができ。記録が出せたことは本当に良かったです」と嬉し泣きした西山だった。
 男子100mマネキントウ・ウィズフィンで57秒61を叩きだし、日本記録を更新したのが、館山SLSCの新鋭、24歳の鈴木陵平だ。鈴木は「競泳をやっていたこともあり、競技に興味を持ってライフセービングを始めるようになりました。でも始めてみるとそれだけの活動ではない。世界が広がりました。自分の得意分野で結果が出せれば、すべてのことに積極的に関われるようになりますね」と、メダルを手に話してくれた。

 その鈴木と4月からチームメイトになったのが、今年3月に大学を卒業した清水雅也(館山SLSC)。学生時代から活躍していた清水だが、今大会では男子50mマネキンキャリーと男子200mスーパーライフセーバーの2種目で、日本記録を更新する勢いを見せた。50mマネキンキャリーは自身の持つ日本記録を0秒21上回り、32秒13をマーク。200mスーパーライフセーバーでは、大学の先輩であり、師匠と慕う、林 昌広(御宿LSC)が持つ記録を3秒近く縮め、2分24秒00で優勝した。
「スーパーライフセーバーでは23秒台を狙っていたんです。最後にマネキンを巻くところでちょっとミスっちゃって……。でも林先輩の記録をずっと抜きたいと思っていたので、目標が一つ達成できたのはうれしいです」と言う清水には、更なる記録挑戦を期待したい。
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東京消防庁が見せたプロフェッショナルの意地

 リレー競技では、女子4×50mメドレーリレーで日本体育大学LSCが1分51秒62、女子4×25mマネキンリレーで日本大学SLSCが1分38秒21で大会新記録をマークした。また男子4×50m障害物リレーでは日本大学SLSCが1分46秒76、館山SLSCが1分46秒80でともに大会記録を更新。男子4×25mマネキンリレーでは、館山SLSCが1分17秒39の日本新記録で優勝した。
 
 男子4×50m障害物リレーで優勝した日本大学SLSC。アンカーを務めた大学2年生の深澤宏理は、「高校まで競泳をやっていので、自分のスキルが生かせたらとライフセービング部に入りました。今回はリレーで貢献できて嬉しいです。でも海ではなかなか思うように泳げず、そこが難しくまた面白いところでもあります」とコメント。過去、何人もの日本代表選手を輩出した同クラブ。チームメイトに揉まれることで、オーシャン競技の実力も上がってくるはずだ。
 記録には届かなかったが、男子4×50mメドレーリレーと男子4×25mマネキンリレーの2種目で表彰台に上ったのがレスキューのプロ集団、東京消防庁LSCだ。1位との差わずか0秒85で3位となったメドレーリレーで、アンカーとして猛烈な追い上げを見せたのが、チーム最年長の菊地 太。レース直後に話を聞くと、「若いものに……」と言ったきり息が続かない。てっきり、若い世代には負けたくない、と言うのかと思ったら、「若いものを世界に行かせてやりたいんです!」と言葉を続けた。
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 ところで、今大会で一つ残念だったのはマネキンキャリーの泳法で失格が多かったことだ。主催者であるJLAに取材したところ、男女50mマネキンキャリー参加者全296人のうち、マネキンの水没またはマネキンの喉、口、鼻をふさぐなどして失格になった選手が96人もいる。1秒でも早く溺者を救う、というライフセービング理念に照らし合わせれば、記録更新は素晴らしい。だからといって失格者が続出しては本末転倒だと言わざるをえないだろう。記録と正確なレスキューを両立してこそ、ライフセービング競技といえるのではないだろうか。
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 最もライフセービング競技らしいといえるのが、水難事故の現場を再現し、90秒以内という制限時間に4人のライフセーバーがどう救助活動を行うかを採点する、シミュレーテッド・エマージェンシー・レスポンス競技(SERC)だ。今回は、海水浴場で離岸流が発生し、水難事故が発生したというシチュエーションで、35チームがレスキューを行った。
 採点ポイント222点で優勝したのは、植木将人、長竹康介、小林 海、皆川綾菜の4人がチームを組んだ西浜SLSC。小林、皆川と10代の選手が2人いるため、「いろいろな場面を想定して練習をしましたが、本番ではとにかく基本に忠実にということを心がけました」と植木。小林、皆川は「やっぱり上がってしまいました。こうすれば良かったということもたくさんあります」と、あっという間の90秒だったことを明かしてくれた。
 2位は菊地 太、本多辰也、落合慶二、小出大祐の4人で出場した東京消防庁LSC。救助者の数では西浜SLSCを上回ったがポイントは201点だった。3位は192点で、安達和也、大谷翔一郞、難波優介、園田 俊がチームを組んだ流通経済大学LSCが入った。
 
 総合優勝は98ポイントを獲得した館山SLSC。クラブ設立から7年目での快挙となった。社会人が多い同クラブを牽引してきた飯沼誠司は、「今まではベテランが引っ張っている感じでしたが、今回は若手が活躍し、優勝を後押ししてくれました。嬉しいですね」と笑顔。「ただSERCが20位など、反省点や今後の課題も見つかりました。夏に向けて、ガード体勢もしっかり強化したいと思います」と話してくれた。

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第25回全日本ライフセービング種目別選手権大会2012/08/20

2012.6.9-10 新潟県・柏崎中央海岸

佐渡を望む柏崎の海に
全国のライフセーバーが集結!


今年、25回目を迎えた種目別選手権大会が新潟県柏崎市の柏崎中央海岸で開催された。
海に囲まれた日本だが、全日本と名前の付くライフセービング大会が
日本海で開催されたのは初めてのこと。
佐渡を遠望する海で熱戦が繰り広げられた。

文・写真=LSweb編集室




初夏の日本海はフラットだった。オーシャン競技はスタミナ勝負!?

 大会会場となった新潟県柏崎市は、日本海側の海水浴場発祥の地といわれる場所。42kmにおよぶ風光明媚な海岸線には15カ所の海水浴場が設置され、夏になると、県内だけでなく群馬や栃木、埼玉などから100万人以上の海水浴客が訪れる。日本海というと白波砕ける荒れた海というイメージがあるが、夏の日本海は海水浴に適した穏やかな海。種目別選手権が開催された2日間も、波はなくフラットな海面が広がっていた。

 個人種目を中心に行われる種目別選手権。初日、各種目の予選は雨が降ったり止んだりのコンディションで行われた。翌日は曇り。最初の決勝種目、サーフレースは少し肌寒い天候でのスタートとなった。男女ともに接戦が予想されたこの種目を制したのは、女子が高校3年生の坂本佳凪子(西浜SLSC)、男子が菊地 光(日本大学SLSC)の2人。
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 という菊地は大学4年生。教育実習のため、あまり練習の時間が取れず不安だったと話すが、会心のレース運びでオーストラリア帰りの西山 俊(湯河原LSC)に勝った。

 ジュニア時代からライフセービングに親しみ、高校の水泳部に所属する坂本は、日本代表選手として海外試合にも出場している毛利 邦(館山SLSC)や、三井結里花(日本大学SLSC)、水間菜登(勝浦LSC)といった実力者を押さえての勝利。ジュニア仲間の上野真凛(西浜SLSC)も3位に入るなど、若手の活躍が目覚ましい種目だった。

 スタートダッシュが勝敗を左右する、フラットなコンディションでのサーフスキーレース。女子はクラフト系を得意とする名須川沙綾(茅ヶ崎SLSC)が、チームメイトの猪又美佳(茅ヶ崎SLSC)と共にスタートダッシュを決め、船団を引っ張る展開となった。久保美沙代(和田浦LSC)、小松崎あゆみ(下田LSC)、佐伯芽維(白浜LSC)ら力のある選手が追いかけるが、トップの座を譲ることなくゴール。だが、猪又とのワンツーフィニッシュが達成できず、自分の優勝はそっちのけで悔しそうな表情を見せた。
 ベテランの尾田依津子(神戸LSC)は6位入賞。しかし、
「表彰台に上るようじゃないと大きな顔ができませんね」
と笑顔でリベンジを誓っていた。

 一方男子はこの種目の第一人者、松沢 斉(下田LSC)以下、強豪がズラリと顔を並べる白熱のレースとなった。松沢は新艇の国産スキーを引っさげての参戦。
「クラブの先輩である江田邦明さんがデザインしたスキーですから、負けるわけにはいかないというプレッシャーがありました。でも特に今日のようなコンディションでは波切が良く、スピードが出ましたね」
 と優勝してほっとした表情を見せた。サーフスキーの入賞者8人は、すべて社会人。なかでも、2位の落合慶二、7位の後関祐輔、8位の菊地 太と3人を送り込んだ東京消防庁LSCの活躍が目を引いた。
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オーシャンマン、オーシャンウーマン、逆転に次ぐ逆転を制したのは?

 オーシャン種目で最もヒートの数が多いのがボードレースだ。決勝レースは予想どおり男女ともに接戦となった。まず行われた女子の決勝を制したのは坂本。サーフレースに続き二冠を達成した。2位は宮田沙依(日本体育大学LSC)、3位は3月に大学を卒業した佐伯という順位。続く男子は長竹康介(西浜SLSC)が安定した力を発揮し、2位の菊地、3位の小出大祐(東京消防庁LSC)らを押さえ優勝した。

 スキー、スイム、ボードの順番で行われたオーシャンマン、オーシャンウーマンレースでは種目ごとに順位が入れ替わる見応えのあるレースが展開された。まず女子がスタート。スキーで飛び出した名須川を、小松崎、三井、毛利が追う展開でスイムに入ると、三井がすかさず逆転。毛利も3位まで順位を上げた。僅差の勝負となったボードでは、名須川がアウトで三井をとらえ逆転に成功。そのままゴールに走り込み、オーシャンウーマン初優勝を飾った。
「めちゃくちゃがんばって泳ぎました」
 という言葉のとおり、スイムで三井に離されず、毛利にも抜かれなかったのが名須川の勝因。僅差で逆転負けした三井は、悔し涙にくれた。
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 男子はさらに目まぐるしく順位が入れ替わるレースとなった。スキーは落合、長竹、西山の順番。続くスイムで西山がトップに躍り出たが、ここまで2位につけていた長竹がボードで一気にスパート。狙い通りのレース展開で、逆転優勝を手にした。長竹とは学生時代からのライバルである落合は、ボードで西山を抜き2位。西山は僅差の3位。4位には大学1年生の坂本 陸(日本体育大学LSC)、加藤 凌(早稲田大学LSC)と石川直人(神奈川大学LSC)の大学生が6位と7位に入る健闘を見せた。

 唯一の団体種目であるオーシャンマンリレーとオーシャンウーマンリレーは、男子が勝浦LSC、女子が下田LSCの優勝。地元の柏崎LSCが男女ともに入賞を果たし、大きな声援を浴びていたのが印象的だった。特にリレーメンバーの全員が高校生で8位となった柏崎LSCの女子チームは、今後の活躍が楽しみだ。
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大混戦のビーチ競技。勝者の顔には笑顔と涙

 LSweb ビーチ競技、まず行われたのがビーチスプリントの決勝だった。昨日の雨でビーチのコンディションは固め。女子は大学生と社会人、それぞれ4人ずつがスタートラインについた。号砲がなり90mの直線を真っ先に駆け抜けたのは、俊足の藤原 梢(館山SLSC)。2位は遊佐雅美(西浜SLSC)、3位は神戸友美(西浜SLSC)。表彰台は全員社会人だった。

 男子はビデオ判定となる大接戦が繰り広げられた。長時間にわたる判定の結果、同着の3位が岩井大地(東海大学湘南校舎LSC)と石井雄大(日本体育大学)の2人。松本雄二郎(和田浦LSC)が2位、優勝は岡田浩平(愛知LSC)。岡田は昨年のインカレ、全日本から三連勝を成し遂げた。30代として決勝レースただ一人残った北矢宗志(西浜SLSC)は、意地で7位に食い込んだ。

 女子のビーチフラッグスでは、種目別選手権大会に久しぶりに出場した遊佐が、決勝レース、最後の一本で抜群の集中力を見せ、藤原を圧倒。女王健在ぶりをアピールした。3位には新星、利根川莉奈(成城学園)が入った。

 波乱が起きたのは男子のビーチフラッグスだ。決勝レースの1本目でインカレチャンピオンの岡田が落ちると、続いて北矢と本多辰也(東京消防庁LSC)のライバル対決で北矢が失格に。LSweb最後の1本は、全日本チャンピオンの植木将人と、ライフセービングを初めて4年目という和田賢一(式根島LSC)の対決となった。その勝負を制したのは和田。フラッグをつかんだ瞬間、顔を覆った和田に植木が握手を求めた。
「20代のうちに、自分の得意な分野で世界一になろうと思っていました。世界一になるためには、まず日本一にならなければいけません。植木さんは間違いなく、今、日本で一番速い人です。尊敬する植木さんに勝ててうれしいです」
 と一言一言、噛みしめるように離してくれた和田だ。

 最終種目、2kmビーチランを制したのは女子が佐々木聡美(白浜LSC)、男子が鈴木友三朗(日本体育大学LSC)。表彰式が始まるころには、日本海に浮かぶ佐渡島をはっきりと目にすることができた。参加競技者数538人。日本海で開催された初めての全日本大会は、地元、柏崎LSCの尽力もあり、ライフセービング活動のアピールに大いに貢献した大会となった。








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